派遣が禁止されている業務5つと例外|合わせて注意すべきポイントもまとめて解説
派遣の受け入れでは、禁止されている業務を正しく押さえなければなりません。禁止業務以外にも注意すべきポイントがあり、不安を感じる人もいるでしょう。
本記事は、派遣の禁止業務から例外業務、派遣に関わる注意点もまとめて解説します。自社に必要な派遣を、安心して受け入れるヒントとしてご活用ください。
目次[非表示]
- 1.人材派遣の仕組み
- 2.人材を派遣できる会社の条件
- 2.1.人材の二重派遣は禁止されている
- 3.派遣禁止業務が生まれた背景
- 4.派遣が禁止されている業務5つ
- 4.1.港湾運送業務
- 4.2.建設業務
- 4.3.警備業務
- 4.4.病院・診療所などにおいての医療関連業務
- 4.5.弁護士・社会保険労務士などの「士」業務
- 5.派遣が禁止されている業務における例外4つ
- 5.1.港湾運送業務の派遣禁止の例外
- 5.2.建設業の派遣禁止の例外
- 5.3.医療関連業務の派遣禁止の例外
- 5.4.士業の派遣禁止の例外
- 6.派遣禁止業務に違反した場合の罰則
- 7.禁止業務以外にもある派遣に関わる禁止事項5つ
- 7.1.日雇派遣の禁止
- 7.2.二重派遣の禁止
- 7.3.離職した社員の1年以内の再受け入れ禁止
- 7.4.派遣社員を特定する行為の禁止
- 7.5.3年を超過する派遣受け入れの禁止
- 8.禁止業務とともに注意したい「労働契約申込みみなし制度」
- 9.まとめ
人材派遣の仕組み
人材派遣は、派遣社員本人と派遣元企業(人材派遣会社)、派遣先企業の三者で成り立ちます。派遣社員の雇用主は、派遣元企業です。派遣社員は派遣元企業と雇用契約を締結し、派遣元企業は派遣社員への給与の支払いや福利厚生の提供を担います。
ただし、派遣社員が実際に働く場所は、派遣先企業です。派遣社員は派遣先企業から仕事の指示や日々の管理を受け、労働力を提供します。
人材を派遣できる会社の条件
人材派遣事業を行えるのは、許可を受けた会社のみです。許可基準を満たさなければ、許可を取得できません。また、一度受けた許可も、定期的に更新手続きが必要です。許可の申請・更新は、厚生労働大臣が管轄しています。
人材の二重派遣は禁止されている
人材の派遣を受けた派遣先企業は、二重派遣しないよう注意が必要です。二重派遣とは、派遣社員を別の企業に労働力として派遣することです。
二重派遣は、次の2点を防ぐために禁止されています。
- 派遣先企業が人材の仲介役となり、派遣社員の賃金を中間搾取する
- 派遣元企業と派遣先企業が締結した労働契約と、実際の就業とに乖離がある
派遣禁止業務が生まれた背景
派遣が始まった当初は、派遣社員は専門性の高い業務に限り受け入れが許されていました。派遣社員の流入が、正社員雇用を脅かす懸念があったためです。
その後、派遣に関する規制は段階的に緩和され、禁止業務(適用除外業務)以外は派遣が認めらるようになりました。
現在、派遣の受け入れは、以下に該当する職種でのみ禁止されています。
- 危険度が高い
- 専門的知識が必要
- 安定雇用の懸念
派遣が禁止されている業務5つ
現在、派遣が禁止されている業務は5つあります。
港湾運送業務
港湾運送業務とは、港湾内の荷役に関わる現場作業です。作業が機械であっても人力であっても、以下のような業務への派遣は禁止されています。
- 港湾と船舶間の荷物の積み下ろし
- 船舶上での荷物の移動や固定作業
- 船舶に積み下ろした荷物の荷造り・荷解き
- 船舶や沿岸で荷物を積み下ろす場所の清掃など
港湾運送業務は、日ごとの業務量の差が大きく、常勤人材の確保が至難です。そのため、一般の派遣社員に関して定める派遣法とは別に、港湾労働法による港湾労働者派遣制度を定めています。この理由により、港湾運送業務では一般の派遣社員の受け入れができません。
建設業務
建設業務とは、建築工事現場の作業を包括的に指します。
- 建物の建設や改造、保存・修理・解体
- 建築・土木工事現場での資材・機材配送
- 建具類の固定・取り外し
- 電飾版・看板の設置・撤去
- 建設・土木工事現場の清掃など
建設業では、受注企業が下請け事業者に発注し、さらに孫請け事業者に発注するといった重層下請け構造が問題になっています。そして、国はこの問題を解決するために、派遣法とは別の法律によって、建設労働力の受給を調整しています。
もし派遣社員の受け入れを許可してしまうと、現在行っている国の施策を阻害してしまう恐れがあるため、建設業務において派遣社員の受け入れはできません。
警備業務
警備業務とは、盗難や事故を警戒し、防ぐための業務です。以下のような業務が該当します。
- 会場や店舗に入る人の荷物検査
- 不審者や迷惑者への注意
- 建物内や会場内の巡回・巡視
- 駐車場の整理・誘導
- 犯罪者の追跡・身柄確保
- 貴重品・金品の監視など
人々や財産・金品の安全に関わる警備業務は、確実な遂行が重要です。そのため、警備法では「警備員は警備会社が直接雇用し、身分を含めて指揮監督しなければならない」と定めています。一時的に業務に当たる派遣社員は、業務・身分上の指導監督が難しいため、受け入れが禁止されています。
病院・診療所などにおいての医療関連業務
派遣が禁止されている業務とは、病院などにおいて有資格者が行う業務です。資格の具体例は以下の通りです。
- 医師
- 薬剤師
- 保健師
- 助産師
- 看護師、准看護師
- 歯科衛生士、歯科技工士
- 診療放射線技師、臨床検査技師
- 理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚師
- 臨床工学技士、義肢装具士
- 救急救命士など
また、病院や診療所、介護老人保健施設などにおける派遣の就労も禁止されています。
医療従事者には、医学的な専門知識や経験、資格が必要です。また、現代の病院では、多くの医療従事者がチームを結成し、連携して医療にあたります。医療現場が人員の選出に関する権限を持たない派遣社員ではチーム医療の実現が困難と考えられ、派遣が禁止されています。
弁護士・社会保険労務士などの「士」業務
「士」業務とは、専門的な資格が必要な業務のうち、「士」がつくものを指します。具体的には、以下の通りです。
- 弁護士、外国法事務弁護士
- 税理士
- 弁理士
- 司法書士
- 行政書士
- 社会保険労務士
- 土地家屋調査士
- 公認会計士など
士業は、依頼者から業務委託された案件を、独自の権限に基づき遂行します。派遣先企業の指示に従う必要がある派遣の性質とは馴染まないため、派遣が禁止されています。
派遣が禁止されている業務における例外4つ
前項で解説した派遣が禁止されている業務のうち、例外的に派遣が認められている例を、4つ紹介します。
港湾運送業務の派遣禁止の例外
港湾運送業務では、港湾内や船舶における現場作業への派遣は禁止されています。ただし、現場作業以外の業務では、派遣の受け入れが可能です。
- 事務的な業務
- トラックの運転など
建設業の派遣禁止の例外
建設業では、建設現場作業とその準備作業への派遣は禁止されています。ただし、現場以外で遂行される事務的な業務へは、派遣が認められています。
- 設計
- 施工管理
- 総務、経理、労務などの事務作業
医療関連業務の派遣禁止の例外
医療関連業務では、派遣が禁止されている場所での業務や有資格者しか行えない業務以外であれば、派遣の受け入れが認められています。たとえば、病院での配膳業務や清掃業務などは、派遣の受け入れが可能です。
また、有資格者の業務でも派遣禁止の場所以外なら派遣が行っても問題ありません。契約期間後の直接雇用が前提の紹介予定派遣や、産育休業・介護休業スタッフの代替としての派遣も認められています。
士業の派遣禁止の例外
士業の業務のうち、条件を満たす業務では派遣受け入れが認められています。たとえば、税理士は次の条件を満たした場合、派遣が可能となります。
- 派遣元が税理士(税理士法人)以外
- 派遣される税理士が、派遣先の税理士(税理士法人)の補助者として業務に当たる
士業で派遣が認められる条件は、資格によって異なります。詳しくは人材派遣会社にご相談ください。
派遣禁止業務に違反した場合の罰則
派遣禁止業務に人材を派遣した場合、派遣元である人材派遣会社には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」(労働者派遣法)が科されます。派遣先が、派遣元に知らせずに派遣社員を禁止業務に従事させた場合も、罰則対象は派遣元です。
なお、派遣先には是正勧告が届きます。もし勧告に従わない場合は、企業名が公表されるといったペナルティがあります。
禁止業務以外にもある派遣に関わる禁止事項5つ
ここからは、禁止業務と合わせて知っておきたい、派遣に関する禁止事項を解説します。
日雇派遣の禁止
日雇い労働者とは、日々あるいは30日以内の雇用期間で就労する人です。労働者の安定収入が難しい、派遣先での雇用管理が煩雑になるなどの理由で、日雇い派遣は原則的に禁止されています。
ただし、31日以上の労働契約や年齢・働き方・業務種類によっては、日雇い派遣が例外的に認められます。
二重派遣の禁止
派遣社員を別の企業に派遣し、労働契約にない指揮命令によって就労させることを二重派遣といいます。二重派遣は、以下の理由から禁止されています。
- 派遣元と派遣契約を締結した本来の派遣先が、賃金を搾取するおそれがあるため
- 契約外の指揮管理下に派遣社員が置かれ、責任範囲が曖昧になることを防ぐため
離職した社員の1年以内の再受け入れ禁止
退職した社員を、1年以内に派遣社員として受け入れてはいけません。退職者の希望であっても、受け入れは違法です。在職中と異なる就業場所であっても、同一法人であれば受け入れはできません。
社員であった労働者が、元より不利な労働状況で派遣社員になることを防ぐために設けられたルールです。
派遣社員を特定する行為の禁止
派遣社員を特定する行為とは、以下のような例です。
- 派遣先が派遣社員の書類選考や面接をする
- 派遣社員に履歴書の提出を求める
派遣は、派遣元が労働者を選定し提供します。派遣先が、働いてもらう人材を選ぶことはできません。
派遣社員による派遣予定企業の見学は可能ですが、この際も特定する行為をしないよう注意が必要です。
3年を超過する派遣受け入れの禁止
派遣社員を受け入れられる期間は、原則的に3年です。
期間は事業所単位・個人単位で定められており、事業所単位の期間のみ、手続きを踏めば延長できます。ただし、個人単位の派遣期間は、派遣社員本人が希望しても延長できません。
禁止業務とともに注意したい「労働契約申込みみなし制度」
労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が派遣社員に直接雇用を申し込んだとみなす制度です。労働契約申し込みみなし制度では、派遣社員の承諾を条件に直接雇用が成立します。
労働契約申し込みみなし制度が適用される例は、以下のとおりです。
- 派遣社員を禁止業務に従事させる
- 無許可の派遣元から派遣社員を受け入れる
- 事業所単位、個人単位の期間制限を過ぎても派遣社員を受け入れる
- 偽装請負(業務委託契約のはずが、実態は労働者派遣)である
まとめ
派遣社員の受け入れでは、派遣法が定める禁止事項に違反しないよう注意しなければなりません。派遣社員を従事させようとしている業務で派遣が禁止されていないか、派遣の形態や期間に問題はないかなど、細かな点まで確実にチェックしましょう。
派遣元が無期雇用(正社員雇用)している派遣社員なら、派遣期間の制約を受けないため、懸念点が1つ解消されます。ITインフラエンジニアの派遣サービスなら、国内最大級のアイエスエフネットにご相談ください。正社員として雇用し、十分な教育を受けたハイレベルなITインフラエンジニアを日本各地に派遣します。
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