会社の試用期間とは?目的やメリット・デメリット、解雇時の注意点などを解説
会社によっては、本採用の前に試用期間を設ける場合があります。人材を採用するにあたり、試用期間を設けるべきかと悩んでいる会社も多いでしょう。本記事では、試用期間の目的やメリットなどを解説します。試用期間中の解雇に関する注意点も述べているため、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.会社の試用期間とは?
- 1.1.試用期間とは
- 1.2.雇用形態にかかわらず適用可能
- 2.会社が試用期間を設ける目的
- 3.試用期間の目安
- 4.研修期間・トライアル雇用との違い
- 5.試用期間を設けるメリット
- 5.1.採用後のミスマッチを防げる
- 5.2.適切な人材配置につながる
- 6.試用期間を設けるデメリット・リスク
- 6.1.適性や資質の見極めが困難
- 6.2.人事担当者や先輩・上司の負担が大きい
- 6.3.従業員側から辞退されるリスクがある
- 6.4.改善を促す場合の伝え方が難しい
- 7.試用期間中に解雇する場合の注意点
- 7.1.試用期間中も雇用契約は成立する
- 7.2.解雇には客観的な合理性が必要
- 7.3.解雇日予告の期間に注意する
- 8.試用期間中の退職における手続き方法
- 9.試用期間中に従業員から退職を希望される原因
- 9.1.社風や雰囲気が合わない
- 9.2.求めていた環境や業務内容と異なる
- 9.3.人間関係のトラブル
- 9.4.体調不良や家庭の事情
- 10.試用期間中のトラブルを防止する方法
- 10.1.試用期間の詳細を明文化する
- 10.2.他の従業員と同様に扱う
- 10.3.求人票の記載内容を見直す
- 10.4.勤務態度や指摘事項などを記録しておく
- 11.試用期間に関するよくある質問
- 11.1.試用期間の延長はできる?
- 11.2.試用期間中の給与や社会保険料の支払いは必要?
- 12.まとめ
会社の試用期間とは?
まずは、そもそも会社における試用期間とはどのような位置付けのものなのか解説します。
試用期間とは
試用期間とは、従業員の入社後、本採用されるまでのお試し期間のことです。基本的には長期の正規雇用を前提として、従業員を正式に採用する前に数か月程度の期間が設けられます。
雇用形態にかかわらず適用可能
試用期間は雇用形態に関係なく適用できるため、有期雇用やパートの従業員にも設定することが可能です。ただし、試用期間の終了とともに雇用形態を変更することはできません。たとえば、試用期間中は有期雇用で、本採用とともに無期雇用に切り替えるといった運用はできないため、注意が必要です。
会社が試用期間を設ける目的
試用期間の目的は、採用した人材の適性や能力、人柄などを見極めることです。一般的に仮採用期間として設定し、その期間中の働きぶりを見て本採用するかを決めます。また、試用期間は、労働者が会社の雰囲気や仕事内容などを見極める期間でもあります。
試用期間の目安
試用期間の長さは、3~6か月程度が一般的です。しかし、試用期間の長さに法的なルールはないため、会社が自由に設定できます。そのため、1か月程度の短い期間を設定する会社もあれば、試用期間が1年以上の長期にわたる試用期間を設ける会社もあります。
研修期間・トライアル雇用との違い
会社によっては、研修期間やトライアル雇用といった仕組みを採用しているケースもあります。これらは試用期間と混同されがちですが、実はまったく異なる制度です。
研修期間
研修期間とは、業務に必要なスキルを身につけるための訓練期間のことです。試用期間が本採用前のお試し期間であるのに対し、研修期間は本採用後のスキルアップ期間を指します。
トライアル雇用
トライアル雇用とは、職業経験の不足などから就職することが難しい求職者について、原則3か月間のお試し雇用を経て、本採用するかどうかを決定する仕組みのことです。ハローワークや、一定の職業紹介事業者が紹介した求職者が対象となります。試用期間との違いは、期間が定められていることと、本採用を前提としない点です。また、トライアル雇用を実施する会社は、一定の条件を満たすことで助成金を受け取ることができます。
試用期間を設けるメリット
本採用前に試用期間を設けるメリットは次のとおりです。
採用後のミスマッチを防げる
試用期間は、使用者と労働者が互いのマッチングを見極めるための期間です。会社は求職者のスキルや人柄を確認し、求職者は会社の社風や他の従業員との相性を確かめることができます。互いに採用・就職の最終判断ができ、採用後のミスマッチを回避することにつながります。
適切な人材配置につながる
試用期間中に人材の適正や意向を把握することは、本採用後の人材配置にも役立ちます。履歴書や面接だけでは把握しにくい、その人の強みを知ることで、適材適所な人材配置を実現できるでしょう。
試用期間を設けるデメリット・リスク
試用期間はメリットも大きい一方、次のようなデメリットやリスクもあります。
適性や資質の見極めが困難
試用期間を設けたとしても、人材の適性や資質を正確に見極められるとは限りません。評価者の判断による部分も大きく、根拠のない判断をしてしまう可能性もあるでしょう。
人事担当者や先輩・上司の負担が大きい
試用期間中にその人のスキルや人柄を見極めるには、人事担当者や先輩・上司が新人の様子を注意深く観察する必要があります。また、新人教育も同時に進める必要があり、通常業務に加えて現場の負担が増してしまいます。
従業員側から辞退されるリスクがある
試用期間は、会社が労働者に見極められる期間でもあります。会社側は本採用したくても、従業員に「入社前のイメージと違う」と思われ、試用期間で辞められてしまう可能性も捨てきれません。また、試用期間は「本採用されるか分からない」という不安定な状態であるため、従業員に不安を与え、モチベーションの低下を招きやすい点もデメリットといえるでしょう。
改善を促す場合の伝え方が難しい
試用期間中に不足している能力があると判明した場合、本人に伝えて改善を促す必要があります。しかし、伝え方に注意しなければ、従業員側から本採用を辞退されるリスクが高まってしまうでしょう。
試用期間中に解雇する場合の注意点
本採用は難しいと判断し、試用期間中に解雇する場合は次のポイントに注意が必要です。
試用期間中も雇用契約は成立する
たとえ本採用前であっても、雇用契約はすでに成立しています。ただし、本採用後とは異なり、試用期間中は「解約権留保付労働契約」を結びます。これは、会社が従業員を解雇できる権利を持つ契約のことです。
解雇には客観的な合理性が必要
試用期間中は従業員を解雇できる権利を保有しているとはいえ、一方的な解雇は認められません。
「正当な理由のない欠勤が続いている」「業務に必要な能力が不足している」などの理由があり、なおかつ会社側が十分な指示や教育などを行っても改善が見られない場合に、初めて解雇することができます。単に「遅刻や欠勤が多いから」「スキル不足だから」といった理由では、試用期間中の解雇は認められないため、注意しましょう。
解雇日予告の期間に注意する
入社後14日を超えるまでは、労働基準法上「試みの使用期間」とみなされ、解雇予告は不要となります。一方、入社後14日を超えた場合は、30日以上前に解雇予告をしなければなりません。解雇予告義務を果たせない場合は、最低30日以上の平均給与を支給する必要があります。
試用期間中の退職における手続き方法
試用期間中の退職には、基本的には通常の退職と同じ手続きが必要です。退職者に対して、源泉徴収票や離職票などを発行する義務もあります。
なお、退職に関する法律上のルールは、従業員が無期雇用か有期雇用かによって異なります。無期雇用の場合、退職申し入れから2週間で退職が成立するため、引き止めたい場合は迅速な対応が必要です。
試用期間中に従業員から退職を希望される原因
ここからは、採用側が知っておきたい、試用期間中のよくある退職理由を紹介します。
社風や雰囲気が合わない
実際に働いてみて、社内の雰囲気になじめず退職を希望する人は少なくありません。具体的には「個人主義的な雰囲気が合わない」「残業することが仕事を頑張っているという価値観が受け入れられない」といった理由が考えられます。
求めていた環境や業務内容と異なる
環境や業務内容にギャップを感じて、退職を希望するケースも多くあります。具体的には「入社前に求めていた仕事ができない」「業務の幅が広すぎて対応しきれない」といった理由が考えられます。
人間関係のトラブル
試用期間中に上司や同僚との折り合いが悪くなり、ストレスから退職を希望するケースもあるでしょう。こうした人間関係のトラブルが原因の場合、基本的に角が立たないような言い方をされることが多いため、会社側が本当の退職理由に気づけない可能性があります。
体調不良や家庭の事情
従業員本人の体調不良や、病気の家族のケアなどにより就労が困難になってしまうケースもあるでしょう。なかには、仕事の負荷が高いために、体調を崩してしまう場合もあります。
試用期間中のトラブルを防止する方法
試用期間中のトラブルを防ぐためには、次のポイントに注意することが大切です。
試用期間の詳細を明文化する
目的や期間、条件など、試用期間の詳細は就業規則や雇用契約書に必ず明記しておきましょう。求人票にも同様の内容を記載し、会社と求職者の間で認識のズレが起こらないよう注意することが大切です。
他の従業員と同様に扱う
試用期間中だからといって他の従業員と差をつけたり、不当な扱いをしたりすると大きなトラブルにつながりかねません。
残業代や有給などの待遇も含めて、他の従業員と同じように扱うよう注意しましょう。
求人票の記載内容を見直す
「思っていた仕事内容や環境と違った」という理由から、試用期間中に退職を考える人は多くいます。求人票に書いている内容を見直し、入社後に実際に任せる仕事内容については、なるべく具体的に記載するよう心がけましょう。
勤務態度や指摘事項などを記録しておく
試用期間中の解雇には合理的な理由が必要であり、主観を排除した客観的な証拠を求められます。勤務態度や教育担当者からの指摘事項などを記録しておくと、万が一解雇の必要性が生じた場合にトラブル回避につながるでしょう。
試用期間に関するよくある質問
最後に、試用期間に関するよくある質問に答えていきます。
試用期間の延長はできる?
試用期間の延長は可能ですが、あらかじめ雇用契約書などに明記しておき、延長の可能性を伝えておく必要があります。また、延長には正当な理由があり、延長期間が適切な長さであることも重要です。正当な理由とは、たとえば「病気やケガにより欠勤が多く、従業員の適性を十分見極められなかった」といったものです。
試用期間中の給与や社会保険料の支払いは必要?
試用期間中も給与の支払いは必要ですが、本採用よりも低く設定できます。ただし、原則的には試用期間中も最低賃金以上の給与を支給しなければなりません。また、社会保険についても、それぞれの制度の加入条件を満たしている従業員について加入させ、保険料を支払う義務があります。
まとめ
会社の試用期間とは、本採用前に設けられるお試し期間のことです。試用期間は、会社が人材の適性や能力などを見極める期間でもあり、人材が会社の雰囲気や働きやすさなどを見極める期間でもあります。これにより、会社と人材が互いに採用・就職の最終判断を下せるため、採用後のミスマッチを回避することが可能です。
なお、試用期間中でも雇用契約は成立しているため、本採用を見送る場合は対応に十分注意が必要です。試用期間を適切に活用し、人材の獲得に役立てましょう。
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