派遣社員を準委任で出すと二重派遣にあたる?注意点や罰則も解説
自社で迎え入れている派遣社員について、準委任契約で外部の会社で働いてもらうことに問題がないのか気になる人もいるでしょう。
当記事では、準委任契約と二重派遣の関係について解説します。準委任契約について詳しく知りたい人は参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.派遣社員を準委任で出すと二重派遣になる恐れがある
- 2.準委任契約とは
- 3.準委任契約に似た契約方式
- 4.二重派遣とは
- 5.二重派遣が禁止されている理由
- 5.1.責任が不明瞭になるため
- 5.2.労働条件が下がる恐れがあるため
- 6.二重派遣の罰則
- 6.1.職業安定法による罰則
- 6.2.労働基準法による罰則
- 6.3.罰則を受ける対象
- 7.準委任契約においては偽装請負にも注意
- 7.1.偽装請負が起こるパターン
- 8.意図しない二重派遣を避けるための対策
- 8.1.指揮命令系統を確認する
- 8.2.契約内容を確認する
- 8.3.派遣社員を教育する
- 9.まとめ
派遣社員を準委任で出すと二重派遣になる恐れがある
自社が依頼をしている派遣元事業主から派遣されてきた派遣社員は、準委任契約として別の会社に再派遣することはできません。再派遣を行うと、二重派遣になる恐れがあります。雇用関係のない労働者を別の企業に労働力として提供する行為は、「労働者供給」に該当し、職業安定法によって禁じられています。
派遣社員を別の企業で働かせるのは違法行為であるため、意図的・意図的ではないに関わらず行わないよう十分に気をつけましょう。
準委任契約とは
準委任契約とは、特定の業務を行うことを定めた契約のことです。
準委任契約は業務の遂行自体が目的であり、結果や成果物の完成については責任を求められないという特徴があります。仕事の完成ではなく、一定の事務処理を行うための契約である点を押さえておきましょう。
準委任契約に似た契約方式
ここでは、準委任契約に似た契約方式について解説します。
請負契約
請負契約は、成果に対して報酬を支払う契約のことです。
契約を結ぶと、委託を受けた人は依頼された内容にしたがって成果物を完成させる義務を負います。期日までに完成品が納品されない限り、報酬が発生することはありません。
委任契約
委任契約は、法律行為を委託する契約のことです。準委任契約と同じく、成果物の完成や仕事の完了がなくても報酬の支払いが発生します。
具体的な例としては、税理士に業務を委任するといった場合に委任契約が用いられます。
二重派遣とは
二重派遣とは、派遣された派遣社員を別の企業で勤務させることを指す言葉です。
二重派遣は、職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)および労働基準法第6条(中間搾取の排除)によって禁止されています。
【職業安定法】
(労働者供給事業の禁止)
第四十四条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
【労働基準法】
(中間搾取の排除)
第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
※引用:職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)|e-GOV法令検索
※引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-GOV法令検索
二重派遣が禁止されている理由
ここでは、二重派遣が禁止されている理由について解説します。
責任が不明瞭になるため
二重派遣が禁止されている理由の1つは、雇用に関する責任の所在が曖昧になるためです。
賃金支払いや労災などについてトラブルが生じた場合は、責任の押し付け合いになる恐れがあります。結果的に、派遣社員が保護されなくなるため、二重派遣は禁止されています。
労働条件が下がる恐れがあるため
派遣社員の労働条件が下がる恐れがあることも、理由として挙げられます。
二重派遣を前提にするとマージンが発生するため、派遣社員の給与が低くなる可能性があります。マージンを取る行為(中間搾取)は、労働基準法第6条により禁止されている行為です。
二重派遣の罰則
ここでは、二重派遣に関わる罰則について解説します。
職業安定法による罰則
職業安定法第44条では、労働者供給事業が禁じられています。二重派遣は、労働者供給事業行為に該当するためです。違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
【職業安定法】
第64条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、これを1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(中略)
十 第44条の規定に違反したとき。
※引用:職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)|e-GOV法令検索
労働基準法による罰則
二重派遣は、労働基準法第6条「中間搾取の排除」に抵触します。違反した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
【労働基準法】
第118条 第6条、第56条、第63条又は第64条の2の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
※引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-GOV法令検索
罰則を受ける対象
二重派遣に関わる違反行為について、罰則を受ける対象は下記のとおりです。
- 職業安定法の場合:派遣先企業および再派遣を受け入れた企業が罰則の対象
- 労働基準法の場合:派遣社員の再派遣をした派遣先企業のみが罰則の対象
いずれの場合においても、二重派遣の対象となった派遣社員については、罰則が適用されることはありません。
準委任契約においては偽装請負にも注意
準委任契約を結んでいる際は、意図的あるいは意図せず偽装請負が行われる可能性があります。二重派遣と同様に、偽装請負にも細心の注意を払いましょう。
偽装請負が意図的に行われるのは、労働者派遣法や各種の労働関係法令の規定から逃れようとしている場合です。また、意図せず行われるのは、労働者派遣と業務委託を区別できていない場合が考えられます。
偽装請負が起こるパターン
偽装請負が起こるのは、下記の4パターンです。
- 代表型:発注者が業務の細かい指示を労働者に出す、勤務時間の管理をする
- 形式だけ責任者型:形式的に責任者を現場に設置する
- 使用者不明型:受発注に携わる関係者が複数いることで、雇用関係が不透明になっている
- 一人請負型:個人事業主として発注者と請負契約を締結しているが、発注者の指揮命令の下で業務を行っている
意図しない二重派遣を避けるための対策
ここでは、意図しない二重派遣を避けるための対策について解説します。
指揮命令系統を確認する
意図しない二重派遣を避けるためには、指揮命令系統の状況を確認しましょう。
具体的には、実際に業務を行う際の指揮命令者と、契約書に明記されている指揮命令者が同じかどうかを確認します。契約書に記載されている指揮命令者と、実際の指揮命令者が異なる場合は、二重派遣の恐れがあります。
契約内容を確認する
どの企業と、どのような契約を結んでいるかも確認しておきましょう。派遣社員がどの企業と労働契約を結んでいるのかを再確認することで、関係性を明確にできます。もし派遣社員の雇用主が自社の派遣契約の相手と異なる場合には、二重派遣の恐れがあります。
派遣社員を教育する
派遣社員に対する教育を徹底することも、意図しない二重派遣を避けるためには重要な取り組みです。
まずは、派遣社員に基本的な労働契約の種類や違いについて理解してもらうよう、個別指導や研修の場などを設けるとよいでしょう。派遣社員が基本的なルールについて十分に理解をしたうえで、実際に誰から業務指示を受けているのかなどの聞き取りをすることで、実際の状況がつかみやすくなります。
まとめ
派遣社員を準委任契約で別の会社で働かせる行為は、二重派遣に該当します。正しいルールを理解したうえで、法律に則って事業を進めるよう十分に配慮しましょう。
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