再委託先への直接指示は可能?再委託において発注元が注意したいポイントを解説
人手不足に対応するため、業務委託を利用する企業が増えています。また、その際に、業務委託先でもリソースやスキルが不足しているという理由で、再委託を打診されるケースもあるでしょう。その場合、再委託先に自社が直接指示を出すことは可能なのか、気になる人も多いのではないでしょうか。本記事では、発注元と再委託先との関係性や、再委託を認める場合に注意したいポイントを解説します。
目次[非表示]
- 1.業務委託・再委託について
- 2.再委託を認める4つのメリット
- 2.1.開発や製造のスピードが上がる
- 2.2.成果物の品質がアップする
- 2.3.工数が多い案件も依頼しやすくなる
- 2.4.コスト削減につながる
- 3.再委託を認める2つのデメリット
- 3.1.セキュリティリスクが高まる
- 3.2.進捗管理が難しくなる
- 4.再委託先に直接指示を出すことは可能?
- 5.再委託を許可する際に注意したいポイント
- 5.1.再委託の可否や条件を明確化する
- 5.2.委託先と再委託先の契約を確認する
- 5.3.再委託先の実績やスキルを確認する
- 5.4.階層ごとの業務を把握する
- 5.5.再委託先を管理する
- 6.再委託について契約書に明記する際の例文
- 6.1.再委託を認める場合
- 6.2.再委託を認めない場合
- 7.派遣契約なら直接指示が可能
- 8.まとめ
業務委託・再委託について
まずは、業務委託や再委託の概要について解説します。
業務委託とは?
業務委託とは、企業が社内業務の一部を、外部の企業や個人事業主などに委託することです。業務委託には、請負契約・委任契約・準委任契約の3つの契約方法があります。
請負契約 |
成果物の納品に対して報酬を支払う契約形態 |
---|---|
委任契約 |
成果物にかかわらず、法律行為に対して報酬を支払う契約形態(医師や弁護士など) |
準委任契約 |
法律行為以外で、成果物にかかわらず業務の遂行に対して報酬を支払う契約形態 |
再委託とは?
再委託とは、業務委託先が、発注元から委託された業務を第三者に委託することです。たとえば、A社がB社に委託した業務を、B社がC社に委託するような場合を指します。業務委託のうち、請負契約では再委託が認められています。一方、委任(準委任)契約では、発注元の了承がなければ再委託はできません。
再委託を認める4つのメリット
業務委託先に再委託を認めると、次の4つのメリットを期待できます。
- 開発や製造のスピードが上がる
- 成果物の品質がアップする
- 工数が多い案件も依頼しやすくなる
- コスト削減につながる
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
開発や製造のスピードが上がる
再委託を認めると、委託先に再委託先の人員や設備がプラスされることで、開発や製造のスピード向上が期待できます。リソースが増えることで、短納期の案件にも対応しやすくなるでしょう。
成果物の品質がアップする
再委託先の持つ設備やノウハウなどを活用することで、成果物の品質が高まる効果も期待できます。委託先に不足している部分を補うことができるため、成果物の品質にこだわりたい場合にもおすすめです。
工数が多い案件も依頼しやすくなる
再委託を認めれば、委託先に加えて再委託先のマンパワーや設備を活用できます。そのため、多くの工数を必要とする長期的な案件も依頼しやすくなるでしょう。
コスト削減につながる
再委託先によっては、コスト削減にも寄与します。たとえば、委託先が人件費の安い国や地域に再委託すれば、委託先のみで対応する場合と比べてトータルコストを抑えられる可能性があります。
再委託を認める2つのデメリット
再委託にはメリットもありますが、次のようなデメリットも存在するので注意が必要です。
- セキュリティリスクが高まる
- 進捗管理が難しくなる
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
セキュリティリスクが高まる
情報にアクセスできる人が増えるほど、情報漏洩リスクは高まります。自社と委託先に加えて、再委託先の労働者も機密情報や顧客情報を確認できる状態になれば、セキュリティ上の危険性はおのずと高まってしまうでしょう。
進捗管理が難しくなる
プロジェクトに関わる企業が多くなると、各業務の進行状況を正確に管理できなくなる場合があります。業務の進捗を把握できないと成果物の品質にも影響するおそれがあるため、再委託を認める場合は進捗管理の方法に注意しましょう。
再委託先に直接指示を出すことは可能?
業務委託において、発注元は委託先への指揮命令権を持ちません。A社(発注元)・B社(委託先)・C社(再委託先)とすると、A社はB社・C社の労働者に対して業務上の指示を出すことはできません。
なお、契約形態が業務委託の場合、A社がB社やC社の労働者に業務上の指示を出すことは偽装請負にあたります。偽装請負とは、契約上は業務委託であるにもかかわらず、実態としては派遣労働者のように使用している状態のことです。
ただし、実際の指揮命令や労働者の配置は受託者側で行われている場合、「業務手順を記載した指示書による指示はOK」といったように、いくつかの例外もあります。ただし、その場合も詳細すぎる指示は禁止されているので注意しましょう。
一方で、委託先と再委託先との契約内容を確認したり、再委託先の業務内容や進捗などを把握することは可能となっています。そのため、委託先・再委託先を含めて、スムーズに意思疎通やコミュニケーションを取れる体制を確立しておくことをおすすめします。
再委託を許可する際に注意したいポイント
業務委託で再委託を許可する場合は、次のポイントに注意しましょう。
- 再委託の可否や条件を明確化する
- 委託先と再委託先の契約を確認する
- 再委託先の実績やスキルを確認する
- 階層ごとの業務を把握する
- 再委託先を管理する
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
再委託の可否や条件を明確化する
再委託の可否や条件については、委託先との契約書にきちんと明記しておきましょう。
再委託の詳細な条件を提示しておけば、情報漏洩といったトラブルを防ぎやすくなります。
委託先と再委託先の契約を確認する
再委託先と直接契約を結ぶのは、自社ではなく委託先の企業です。しかし、委託先に契約を任せきりにしていると、トラブルが起きるリスクが高まります。必要に応じて契約内容に関する指示を出すといったように、発注元が積極的に関わることが大切です。
また、委託先と再委託先の契約内容では、著作権についても注意したいポイントです。
再委託先の実績やスキルを確認する
再委託先の選定は委託先に任せきりにせず、自社でも実績やスキルなどを確認しましょう。
必要に応じて委託先にヒアリングを実施し、再委託先を慎重に検討することが重要です。
階層ごとの業務を把握する
発注元からの距離が遠くなるほど「誰がどの業務を担当しているのか」を把握しづらくなります。
こうした状態を放っておくとトラブルに発展しかねないため、再委託先を含めた3社の情報共有体制を構築するとよいでしょう。
再委託先を管理する
基本的に、再委託先の管理責任は委託先の企業が持ちます。発注元と再委託先は、委託先を介した関係であり、委託先と協力しながら再委託先を管理することが重要です。
たとえば、情報漏洩の対策としては、機密情報の管理方法について再委託先を指導する、リスク評価を実施するなどの方法が考えられます。また、品質管理においては、定期的な品質検査や評価を実施するとよいでしょう。
再委託について契約書に明記する際の例文
再委託によるトラブルを防ぐためには、再委託の可否や条件を契約書に明記することが大切です。
ここからは、再委託について契約書に明記する際の例文を紹介します。
再委託を認める場合
再委託を全面的に認める場合は、次のような内容を記載しましょう。
乙(受託者)は、本契約にかかわる委託業務を、第三者に対して自由に再委託できるものとする。
なお、再委託を認める場合は、条件を付記することも可能です。たとえば、発注元の承認を得ずに勝手に再委託することを禁じる場合は、契約書に次のように記載します。
乙(受託者)は、甲(委託者)に事前に承諾を得た場合のみ、本契約にかかわる委託業務を第三者に再委託できるものとする。
ほかには、秘密保持義務に関する内容を盛り込んだり、再委託可能な業務範囲を制限したりすることも可能です。
再委託を認めない場合
再委託を認めない場合は「再委託禁止事項」という条項を設けて、第三者への再委託を禁止する旨を明記しましょう。たとえば、次のような内容を記載します。
乙(受託者)は、いかなる場合も本契約にかかわる業務を第三者に再委託することはできない。
ただし、再委託を一律禁止とするのはリスクも伴うので、条件付きで許可するケースが多いでしょう。
派遣契約なら直接指示が可能
業務委託・再委託は人材不足の解消手段として有効ですが、「発注元に指揮命令権がない」という点が足枷になる場合があるでしょう。一方、派遣契約なら、派遣スタッフに対する指揮命令権は自社にあります。ルール変更やイレギュラーな事態が発生する業務でも柔軟に対応しやすいため、業務効率の維持も可能です。人材不足に悩んでいる場合は、派遣契約もぜひ検討してみてください。
まとめ
業務委託契約では、委託先への直接指示は禁止されています。当然、再委託先も同様です。「業務手順を記載した指示書による指示はOK」といった例外はあるものの、基本的に業務に関する指示は認められていません。
さまざまなメリットを期待できる再委託ですが、同時に情報漏洩のリスクが高まるといったデメリットもあります。トラブルを未然に防ぐためにも、契約書には再委託の可否や条件をしっかり明記しておきましょう。
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