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準委任契約で想定される8種類のトラブル|回避するポイントや契約書に記載する項目などを解説

自社のリソースでは進行が難しい専門的な業務が発生した際、活用したいのが社外のプロフェッショナルです。しかし、「自社の業務を外注したいが、トラブルが心配」「実際にどのようなトラブルがあるのか」と気になっている人もいるのではないでしょうか。本記事では、業務委託契約の1種である準委任契約の特徴や、よくあるトラブル、トラブルを回避する方法などを解説します。準委任契約を正しく理解し、適切に契約を進めるヒントとして活用してください。

目次[非表示]

  1. 1.準委任契約の定義
    1. 1.1.準委任契約が適用される職種
  2. 2.準委任契約の特徴
  3. 3.準委任契約と他の業務委託形態との違い
    1. 3.1.準委任契約と委任契約の違い
    2. 3.2.準委任契約と請負契約の違い
    3. 3.3.準委任契約と派遣の違い
    4. 3.4.準委任契約の報酬形態について補足
  4. 4.準委任契約でよくあるトラブル8種類
    1. 4.1.1.偽装請負
    2. 4.2.2.二重派遣
    3. 4.3.3.中途解約
    4. 4.4.4.納期遅延
    5. 4.5.5.報酬
    6. 4.6.6.納品物の契約不適合責任
    7. 4.7.7.機密情報の漏洩
    8. 4.8.8.再委託
  5. 5.準委任契約でトラブルが発生する要因
    1. 5.1.契約書の記載内容が不十分だった
    2. 5.2.業務のやり方を具体的に指示できない
    3. 5.3.偽装請負のリスク
  6. 6.準委任契約でのトラブルを回避する方法
    1. 6.1.契約書を取り交わす
    2. 6.2.トラブルにつながりやすい項目はすべて取り決める
  7. 7.準委任契約のトラブルを防ぐために契約書に記載すべき項目
    1. 7.1.1.契約の種類
    2. 7.2.2.委託する業務内容と範囲
    3. 7.3.3.報酬額と支払い方法、支払い期日
    4. 7.4.4.納品方法と納期
    5. 7.5.5.再委託の可否
    6. 7.6.6.機密情報の取り扱いと情報漏洩対策
    7. 7.7.7.知的財産権
    8. 7.8.8.契約の解除と損害賠償
    9. 7.9.9.諸経費の精算
  8. 8.準委任契約書の作り方
  9. 9.まとめ

準委任契約の定義

準委任契約は、業務委託のうち「法律行為を伴わない業務の外注」を指す言葉です。基本的には、業務遂行のみを目的・報酬対象とし、成果の達成は問われません。

準委任契約が適用される職種

準委任契約は、専門的な知識や技術を必要とする特定業務に対して適用されます。準委任契約が該当する職種の例は、以下の通りです。

  • コンサルタント
  • 公認会計士
  • ITエンジニア など

準委任契約の特徴

準委任契約には、委任者(発注側)と受任者(請負側)に雇用関係がないという特徴があります。

また、委任者は受任者に対して指揮命令権を持たず、業務の遂行方法や稼働時間・場所の指定もできません。受任者が依頼された業務を第三者へ再委託することはできませんが、受任者が雇用する従業員に指揮命令し、業務を遂行させることは可能です。

さらに、準委任契約では、受任者に契約不適合責任はなく、善管注意義務があります。契約不適合責任とは、業務に瑕疵(欠陥)があった際に受任者が一定の法的責任を負う仕組みです。善管注意義務は、通常期待される範囲内で注意を払わなければならない義務を意味します。

準委任契約は契約期間の制限がなく、いつでも契約解除できます。必要に応じて社外のプロや専門的なスキルを活用できる点が、準委任契約のメリットです。

準委任契約と他の業務委託形態との違い

準委任契約と、その他の業務委託形態を比較し、違いを解説します。

準委任契約と委任契約の違い

準委任契約と委任契約は、外注する業務が法律行為を伴うか否かが異なります。準委任契約は法律行為を伴わない業務が対象で、委任契約は法律行為を伴う業務の外注で用います。

準委任契約は基本的に委任契約のルールに準じており、法律行為の有無以外の点で両者に大きな違いはありません。

準委任契約と請負契約の違い

準委任契約と請負契約は、報酬の対象が異なります。準委任契約は、一般的に業務の遂行に対して報酬が発生しますが、請負契約は業務の結果である成果物に対して報酬が発生します。

準委任契約と派遣の違い

準委任契約と派遣は、雇用関係の有無が異なります。準委任契約は委任者と受任者の間に雇用関係はなく、業務に関する指揮命令ができません。派遣では派遣先企業が指揮命令権を持ち、仕事のやり方を具体的に指示できます。

準委任契約の報酬形態について補足

2020年4月1日の民法改正で、従来は業務遂行のみが報酬の対象だった準委任契約(履行割合型)に、成果物に対して報酬を支払う形態(成果完成型)が追加されました。現在は、発注する案件の性質に合わせ、報酬形態を選択できるようになっています。

準委任契約でよくあるトラブル8種類

準委任契約でよく見られるトラブルを8つ解説します。

1.偽装請負

準委任契約を締結した受任側に対し、委任側が指揮命令権を行使してしまうことを偽装請負と呼びます。偽装請負は法律で禁じられており、発覚すると委任者側に次のような対応が求められる場合があります。

社会保険料や残業代などの支払い
行政処分や刑事罰

2.二重派遣

二重派遣は、SES派遣(システムエンジニアリング契約)で起こりがちなトラブルです。二重派遣は、委任側が受任側に、本来の契約ではない別の取引先から請け負った業務を遂行させる契約です。二重派遣も、行政処分や罰金刑の対象となります。二重派遣の具体例としては、「自社の案件を進行中の準委任契約受任エンジニアに、別の取引先から依頼された業務も担わせる」といった例があります。

3.中途解約

準委任契約は、基本的にいつでも契約解除が可能です。ただし、相手に一方的な不利益となる解約はトラブルにつながりかねません。深刻な事態に発展した場合、契約解除を申し出た側に損害賠償が求められる可能性もあります。

4.納期遅延

履行割合型の準委任契約では、受任側は業務の完成義務を負いません。そのため、未完了・遅延などのトラブルも起こり得ます。ただし、納期がなくとも、受任側には納期に対する善管注意義務があります。また、納期遅延による損害は賠償を求めることも可能です。

5.報酬

委任側と受任側で報酬額や支払いのタイミング、評価方法などについての考えが食い違い、トラブルになる場合があります。委任側の事務処理ミスによって、支払いが滞ることもあるため注意が必要です。

6.納品物の契約不適合責任

準委任契約には契約不適合責任がないため、契約書の修正に関する記載がない限り、受任者に修正対応の義務は発生しません。しかし、然るべき注意を払って業務を遂行すべきという善管注意義務はあるため、納品物の品質に欠陥があった場合、対処を巡ってトラブルになるケースもあります。

7.機密情報の漏洩

準委任契約の業務遂行に必要な社内業務を受任者側にわたす以上、機密情報の漏洩は想定しておくべきでしょう。トラブル回避には、機密情報の管理徹底が重要です。万一、機密情報が漏洩した場合は、委任側が受任側に損害賠償を請求できます。

8.再委託

準委任契約の受任者は、発注側との合意を前提に業務を再委託できます。受任側に問題がなくとも、再委託先で情報漏洩などのトラブルが起きる可能性も考えられます。再委託の可否や再委託先の選択は、慎重に決定しましょう。

準委任契約でトラブルが発生する要因

準委任契約でトラブルが起きる要因を3つ解説します。

契約書の記載内容が不十分だった

準委任契約をはじめとする業務委託では、契約書に基づいて業務が遂行されます。契約書の記載内容が不適切、あるいは漏れや不備があっても業務は契約書通りに進むため、結果的にトラブルの原因となります。

業務のやり方を具体的に指示できない

準委任契約では、委任側が受任側に業務の遂行方法を具体的に指示できません。期待したやり方で委任側が業務を進めるとは限らず、望んだ成果が得られない可能性も考えられます。

偽装請負のリスク

偽装請負の知見がない現場担当者が、受任側に業務の指揮命令権を行使してしまう場合があります。知らなかったという言い分は通用しないため、トラブルに発展することも考えられます。

準委任契約でのトラブルを回避する方法

準委任契約でのトラブルを回避する方法は2つあります。それぞれを詳しく解説します。

契約書を取り交わす

準委任契約を含む業務委託の契約やその内容は、口約束でも成立します。ただし、口約束は内容があいまいになり、トラブルのもとです。シンプルな契約であっても、必ず契約書を取り交わしましょう。

トラブルにつながりやすい項目はすべて取り決める

成果物を求められない履行割合型の準委任契約は、契約の内容があいまいになりがちです。しかし、あいまいな契約はトラブルを引き起こします。本記事も参考にしながら、トラブルになりやすい項目はすべて取り決めておくことが大切です。

準委任契約のトラブルを防ぐために契約書に記載すべき項目

トラブルを防ぐために準委任契約書に記載すべき項目を9つ解説します。

1.契約の種類

現在、準委任契約には、履行割合型と成果完成型の2種類があります。形態によって報酬基準が異なるため、どちらの形態で発注するのかは重要なポイントです。業務に適した形態を精査し、契約書に明記します。

2.委託する業務内容と範囲

受任側に委託する業務内容と業務範囲を、細かく明記しましょう。業務が多岐にわたる場合は、契約書には概要を記載し、詳細は別紙を添付し取り決めても構いません。

3.報酬額と支払い方法、支払い期日

報酬は、金額と支払い方法、支払い期日を明記します。また、支払い条件も記載することでトラブルを防ぎやすくなるでしょう。

4.納品方法と納期

契約書には、発注した業務(成果物)の納品方法と納期を明記します。形態が履行割合型か、成果完成型によって記載内容が異なるため、注意を払いましょう。

5.再委託の可否

業務の再委託には、次の3パターンがあります。

  • 再委託禁止
  • 再委託可
  • 委任側の承諾付きで再委託可

自社の再委託に関する姿勢を明確にし、契約書に記載してください。

6.機密情報の取り扱いと情報漏洩対策

業務遂行に際して機密情報の取り扱いが必要な場合は、機密情報の定義と範囲、管理方法、漏洩時の責任や対応なども明記します。例外ケースを設定したい場合は、具体的に記載します。

7.知的財産権

前提として、制作物の著作権は制作者本人に帰属します。知的財産権が受任側にあると、自社で自由に使えないといったデメリットも発生します。契約書には、知的財産権の帰属先や使用可能範囲を明記しましょう。

8.契約の解除と損害賠償

準委任契約はいつでも解約可能ですが、相手に一方的な不利益をもたらす解約は避けるべきです。契約解除の通知方法や期限や、自社に不利益になった場合の損害賠償についても、具体的に記します。

9.諸経費の精算

業務遂行にあたって、さまざまな経費が必要になることも考えられます。1つひとつの経費は少額でも、いずれは多額になり、トラブルに発展する可能性もゼロではありません。経費の負担割合や、精算方法も取り決めます。

準委任契約書の作り方

準委任契約書は、一般的に委任側が作成し取り交わします。契約書は2通作成し、それぞれに委任側と受任側が署名捺印し、保管してください。契約書を紙で作成した場合は、印紙税額相当の収入印紙の貼付が必要です。双方合意の上、電子ファイルで契約を交わす場合は、収入印紙は必要ありません。

まとめ

準委任契約は、法律行為を伴わない業務の遂行で交わされる業務委託形態です。納期遅延や報酬、契約不適合責任などのトラブルが起こりやすいため、契約書で緻密に取り決めておくことが大切です。

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