SD-WANをわかりやすく!DXで注目される次世代ネットワーク通信~前編~
『ネットワークの維持費が高いんだよなぁ、、、』
『クラウドサービスの増加でネットワークが遅くなって従業員が困ってるんだよなぁ、、、』
『回線状況を確認したいけど、どうすればいいんだろう、、、』
こんなお悩み抱えている方、多いと思います。
お悩み解決の手段として、今注目されているのが“SD-WAN”です。たとえば、SD-WANの“ローカルブレイクアウト”という機能を用いることで、クラウドサービスの利用増加でひっ迫しがちなインターネット回線の負荷を下げることができます。
昨今のテレワーク導入企業の拡大など、働き方の多様化に伴うネットワーク負荷増大への対応手段としても注目されているSD-WANとは何か?メリット、デメリットも含めて解説していきます。
目次[非表示]
- 1.SD-WANとは?
- 2.なぜいま、SD-WANが必要とされているのか?
- 2.1.インターネット接続拠点の増加
- 2.2.クラウドの普及によるトラフィック量の増大
- 3.SD-WAN活用のメリットとは?
- 3.1.ネットワークの負荷分散
- 3.2.運用・管理工数の削減
- 3.3.DX推進に貢献
- 3.4.コスト低減
- 4.SD-WAN活用のデメリットとは?
- 4.1.SD-WAN運用管理者不足
- 4.2.新たなセキュリティリスク
- 5.まとめ
SD-WANとは?
そもそもSD-WANとは何でしょうか?
SD-WANとは、Software-Defined WAN(ソフトウェア定義型広域ネットワーク)の略称であり、WANにかかる負荷をソフトウェア上でコントロールし、快適なネットワーク通信を提供する技術のことです。
似たような用語で“SDN”(Software-Defined Networking)があります。
“SDN”とは、具体的な製品や技術の名称ではなく、ソフトウェアにより定義されたネットワーク、またはそれらを実現する技術全般を意味します。
SDNを定義する機能として
「トラフィックを処理するネットワークの構成要素を」
「コントローラと呼ばれる機器で集中管理し」
「ネットワーク全体を制御する」
といったものがあげられます。
そのSDNの機能をWAN接続にも応用したものがSD-WANとなり、さらにSD-WANの上位概念がSDNになるのです。
また、SD-WANは以下のような要件を備えているものが一般的です。
- ゼロタッチプロビジョニング(※1)
- 高い可用性(※2)のあるハイブリッドWANの実現
- アプリケーションや回線品質にもとづくWAN経路の制御
※1:ゼロタッチプロビジョニングとは、拠点にデバイスを設置して回線をつなぎ、電源をオンにすれば、自動的に拠点をSD-WANにつなぐ機能です。
※2:可用性とは、継続的に稼働できるという意味です。
なぜいま、SD-WANが必要とされているのか?
なぜSD-WANが“いま”注目されているのでしょうか?
SD-WANが注目される背景には、インターネット接続拠点の増加と、クラウドの普及によるトラフィック量の増大(※3)があります。
※3:トラフィック量とは、インターネットやLANなどのコンピューターなどの通信回線において、一定時間内にネットワーク上で転送されるデータ量のことを意味します。
インターネット接続拠点の増加
現在、働き方改革の推進により、ICT(※4)の活用が拡大しています。
インターネット接続できる場所ならばどこでも仕事ができるようになりました。
※4:ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、IT(Information Technology)にCommunicationが加わった言葉です。ITがコンピューターの機能や開発に関する「情報技術」という意味をもつ一方、ICTは「情報通信技術」と訳され、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称として使われています。
とくにテレワークの拡大は、インターネット接続の拠点を増加させ、企業のネットワークトラフィックがひっ迫し、VPN接続やプロキシサーバ(※5)の管理・運用を圧迫しています。
※5:プロキシサーバーとは、インターネットへのアクセスを代理で行うサーバーのことです。
クラウドの普及によるトラフィック量の増大
また、一昔前まではすべてのアプリケーションを社内で開発、構築、運用し、スタンドアロン(※6)やオンプレミスシステム(※7)に象徴されるように、社内と社外でシステム運用を明確に分けておりました。
※6:スタンドアロンとは、機器やソフトウェア、システムなどが、外部に接続あるいは依存せずに単独で機能している状態のことを意味します。
※7:オンプレミスシステムのプレミス(premise)は「構内」「店内」の意味で、オンプレミスは、サーバーやソフトウェアなどの情報システムを、使用者が管理している施設の構内に機器を設置して運用することを指します。「オンプレ」と略されることもあるほか、「自社運用」とも呼ばれることもあります。
しかし、昨今では、社内のシステム基盤やアプリケーションをクラウドサービスで利用することが当たり前の時代になりました。
とくに昨年からのコロナ禍で急激に増えたテレワークで使用されることが多い、Zoomに代表されるリモートミーティングアプリケーションをクラウド上で利用することにより、回線のトラフィックが大幅に増加し通信遅延を起こすことで業務に支障をきたすようになってきました。
そういった状況の改善のために注目されているのが“SD-WAN”です。
では、SD-WANには、どういったメリットがあるのでしょうか?
SD-WAN活用のメリットとは?
SD-WANのメリットは、大きく分けて以下の4点があげられます。
- ネットワークの負荷分散
- 運用・管理工数の削減
- DX推進に貢献
- コスト低減
ネットワークの負荷分散
まず、SD-WAN最大のメリットは、ネットワークの負荷分散ができるということです。
ご紹介してきた通り、近年クラウドサービスの活用増加により、ネットワーク回線のトラフィックが増加してきております。
その際に活用されるのが、SD-WANの“ローカルブレイクアウト機能”(※8)です。
※8:ローカルブレイクアウト機能とは、特定のクラウドサービス向けのトラフィックについては、データセンターなどに設けられたインターネットとの接点を使わず、各拠点から直接アクセスするネットワーク構成を意味します。
そんな時にローカルブレイクアウト機能で、Microsoft 365だけを拠点から直接インターネットに接続させる設定にすることで、WANのトラフィック負荷を低減させることが可能になります。
運用・管理工数の削減
二点目は、運用・管理工数を大幅に削減できるということです。
今までは、各拠点のネットワーク機器すべてにVPN設定の仕組みを設定し、セキュリティ強化を図っていた企業が多かったです。SD-WANのゼロタッチプロビジョニングの機能を活用すると、これらの作業が大幅に簡略化され、運用管理負荷が大幅に削減されます。
たとえば、拠点の増設をする場合、今まではインフラ管理者が拠点に行き、設定を行っていました。
同じ状況で、SD-WANを導入している場合、各拠点のルータ機器を直接触ることなく、クラウドのコンソール上で設定などを簡単に行うことが可能になります。
また、今までは管理が煩雑だった回線のトラフィック量やネットワーク機器の設定状況などを、コンソール上で簡単に管理できることになるため、管理者の工数、負荷も大幅に軽減されます。
DX推進に貢献
三点目は、恐らく、多くの企業がもつ喫緊の課題である、デジタル・トランスフォーメーションの推進に対しても貢献できるということがあげられます。
たとえば、経営層やビジネス部門から、新規事業開発のために迅速なクラウドサービスの導入や、新しいアプリケーションの開発を行いたいといった要望が来た場合、WANの拡張やコントロールが簡単にできることで、スピード感をもってビジネス環境を構築、設定することが可能です。
また、ネットワーク設計や機器設定の工数や時間、担当者の労力も大幅に短縮・削減可能となるため、IT管理側、ビジネス側両面においてWIN-WINの環境を推進できます。
コスト低減
四点目は、コストカットにつながる可能性があるということです。
SD-WANを導入する際には専用のルータを用意する必要が有るため、ある程度の初期費用が掛かります。
しかし、インターネット回線のランニングコストを削減できる可能性が有ります。
先に紹介した、インターネットブレイクアウトを実現するためには、拠点に新たな回線を契約する必要がありますが、安価なインターネット回線を使用することで費用を抑えることができます。
これだけだと安価とは言ってもランニングコストは上がってしまいますが、現在使用している専用回線の契約内容を見直すことで、トータルでのコスト削減につながる可能性があります。
SD-WAN活用のデメリットとは?
逆に、SD-WAN活用におけるデメリットは何でしょうか?
以下2点があげられます。
- SD-WAN運用管理者不足
- 新たなセキュリティリスク
SD-WAN運用管理者不足
SD-WANは次世代WANと呼ばれ、これまでのWANとは違う運用ノウハウが必要になるため、日本での需要拡大スピードに、SD-WAN運用管理人材の育成が追いついていない現状があります。
この点については、早急にネットワーク構築・運用経験者を中心に、SD-WANのノウハウを付けさせて育成していく必要があります。
新たなセキュリティリスク
また、ゼロトラスト(※9)が叫ばれている今、日々新たなセキュリティリスクが生まれており、柔軟なネットワーク構成を実現できるSD-WANでも、その柔軟性が新たなセキュリティリスクを生むことがあります。
※9:ゼロトラストとは、すべて信頼しないという考え方を前提にセキュリティ対策を行い、外部はもちろん、内部からのアクセスであっても、すべてを疑い制御する考え方を意味します。
たとえばローカルブレイクアウトは、中央に流す通信とネットワーク機器から直接インターネットに抜ける通信とに分離させますが、ネットワーク機器のファイアウォールがしっかり設定されていなければ、セキュリティホール(※10)となってしまいます。
※10:セキュリティホールとは、不具合や設計上のミスが原因となって発生した情報セキュリティ上の欠陥のことを意味します。
しかし、SD-WAN導入経験が豊富なパートナー企業に運用をアウトソースすることで、人材不足の解消、SD-WANのセキュリティ範囲外をリカバリーできるソリューションとの組み合わせで、上述してきたデメリット面のふっしょくも可能となります。
まとめ
今回、“SD-WAN”とは、WANにかかる負荷をソフトウェア上でコントロールし、快適なネットワーク通信を提供する技術のことであり、働き方の多様化やクラウドサービスの普及率向上で引き起こされるネットワークの遅延トラブルへの対策として注目されているということを解説しました。
また、SD-WANのメリット4点、デメリット2点についても触れ、SD-WANの大まかなご理解を頂けたと思います。
◇SD-WANの4つのメリット
- ネットワークの負荷分散
- 運用・管理工数の削減
- DX推進に貢献
- コスト低減
◇SD-WANの2つのデメリット
- SD-WAN運用管理者不足
- 新たなセキュリティリスク
新しい技術のため、当然まだデメリットもありますが、導入のプロフェッショナルであるサービスベンダーに依頼することで、デメリットの回避も可能なため、最適なパートナー選びが重要と考えます。
次回はサービスベンダーならびに、導入に掛かるおおまかな費用感について解説いたします。
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※この記事は、公開時点の情報をもとに作成しています。