マルチクラウドとは何か?クラウドの基本から学ぶ初心者向け解説
IT業界には様々な用語が存在します。
「マルチクラウド」もそのうちの一つで、インターネット上のサービスを利用するユーザーの立場では、あまりなじみがない言葉かもしれません。
そのような「マルチクラウド」について、IT技術者として初めて触れる方に向けて、まずは「クラウドとはそもそも何か」をはじめ、「どういった形態がマルチクラウドとなるのか」について解説します。
目次[非表示]
- 1.クラウドとは
- 1.1.プラットフォーム
- 1.2.サービス
- 1.3.パブリックとプライベート
- 1.4.クラウドとオンプレミス
- 2.マルチクラウドとは
- 2.1.マルチクラウドのメリット・デメリット
- 2.2.ハイブリッドクラウドとの違い
- 2.3.補足:ガバメントクラウド(Gov-Cloud)
- 3.まとめ
クラウドとは
クラウド(クラウドコンピューティング)とは、GmailやTwitterなどに代表されるような、インターネットを経由してユーザーにサービスを提供する形態のことをいいます。
また、そのようなサービスを「クラウドサービス」と呼びます(以降の記事において「サービス」とは「クラウドサービス」のことを指します)
プラットフォーム
サービスを提供するためのクラウド型プラットフォーム(アプリケーション実行やデータ保存ができる基盤を、Web上で展開しているもの)の例としては、下記が挙げられます。
- Amazon Web Services(AWS)
- Microsoft Azure
- Google Cloud
- Alibaba Cloud
サービス
クラウド型プラットフォーム上で提供されるサービスの代表的な例としては、下記が挙げられます。
- Gmail(Google)
- iCloud(Apple)
- Office 365(Microsoft)
- Twitter、FacebookなどのSNS
上記に記載したサービスはクラウドサービスの一つである「SaaS」でもあります。
クラウドサービスは大別すると、下記のように分類されます
クラウドサービス |
主なサービス内容※ |
SaaS (Software as a Service) |
ソフトウェア |
PaaS (Platform as a Service) |
アプリケーションの開発・実行環境 |
IaaS (Infrastructure as a Service) |
仮想マシン |
※サービス内容は総務省の白書から引用
パブリックとプライベート
クラウドの環境には、パブリックとプライベートの概念があり、以下のような違いがあります。
クラウド環境 |
概要 |
パブリック |
不特定多数が利用可能なオープンな環境 |
プライベート |
特定の人(企業)のみが利用可能な専用的な環境 |
クラウドとオンプレミス
クラウド環境に対して、オンプレミス環境との違いは以下となります。
環境 |
概要 |
クラウド |
AWS(Amazon)やAzure(Microsoft)などが提供している仮想サーバやネットワーク、ソフトウェアを使用する |
オンプレミス |
社内のサーバルームにある物理サーバを使用する(一例) |
マルチクラウドとは
マルチクラウドとは、クラウド環境を構築するにあたり、おもにパブリッククラウドにおいて複数のプラットフォームを併用することを指し、用途によって上述したプラットフォームを使い分けることです。
たとえば、ノウハウやサービスが豊富なAWSを基盤として利用し、分析にはAI分野が得意なGoogle Cloudを利用するといった使い方です。
マルチクラウドのメリット・デメリット
メリット
- それぞれが得意とする機能の良いとこ取りをしやすく、自社用にカスタマイズ可能
- ベンダーロックインを防げる(※1)
- 仮想サーバであるためバックアップやリカバリが比較的容易
- 現地に赴かずとも、関東・関西などそれぞれに配置が可能(BCP対策(※2)、DR対策(※3))
※1 ベンダーロックイン:単一のベンダーに依存すること。1つのベンダーの技術に依存してしまうと、たとえば「契約金額が上がったので他社への切り替えを検討したい」と思っても、技術の仕様が異なると切り替えることが難しくなってしまう。
※2 BCP(Business Continuity Planning)対策:組織が予期せぬ事態や災害が発生した場合にも、事業を継続して行うための計画。
業務の継続性を確保するために、代替的な作業場所の確保などが含まれる。
※3 DR(Disaster Recovery)対策:災害が発生した場合に組織の情報システムやデータを回復し、事業の継続性を確保するための計画。バックアップや冗長性の確保、復旧手順の策定などが含まれる。
デメリット
- 管理者がそれぞれのプラットフォームの仕様や扱い方を学ぶ必要がある
- 複数の契約により、想定外のコストが掛かる場合がある
- セキュリティ基準がベンダーによって異なる場合がある
ハイブリッドクラウドとの違い
マルチクラウドが「クラウド(パブリック)で構成されること」に対し、ハイブリッドクラウドは「クラウド(パブリック/プライベート)に加えて、オンプレミスも含めて構成されること」を指します。
たとえばネットショップの場合、大きくわけてWebアプリケーションサーバとDBサーバで構成されています。
このような場合、
- 不特定多数の人がアクセスするWebアプリケーションサーバはパブリッククラウド
- 顧客情報など重要なデータが蓄積されるDBサーバはプライベートクラウドもしくはオンプレミスに配置する
といった構成を実現できるのがハイブリッドクラウドの特徴です。
<イメージ図>
参考元:マルチクラウドとは?メリットや課題を専門家が解説
補足:ガバメントクラウド(Gov-Cloud)
マルチクラウドに関連する事柄として、「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」があります。
これはデジタル庁によるIT施策の一つで、「政府の情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境のこと」を指します。
大まかに説明すると、それぞれ独自の構築をしている政府や地方公共団体のシステムを、クラウドで共通化して監視・運用できるようにする仕組みです。
ガバメントクラウドのための公募が行われ、下記に挙げるベンダーが対象となりました。
- Amazon Web Services(Amazon)
- Google Cloud(Google)
- Microsoft Azure(Microsoft)
- Oracle Cloud Infrastructure(Oracle)
※公開日:2022年10月3日 参考元:デジタル庁、総務省、IT求人ナビ
まとめ
本記事では、クラウドの基本概念およびマルチクラウドについて解説しました。
ポイント
- クラウドは、インターネットを経由してユーザーにサービスを提供する形態のことで、そのようなサービスをクラウドサービスと呼ぶ
- マルチクラウドは、複数のクラウド環境(クラウド型プラットフォーム)を併用し、用途に応じて使い分けること
- マルチクラウドのメリットは、各プラットフォームの良いとこどりがしやすい点と単一のベンダーに依存しない点がある。反面デメリットとしては、使い勝手の異なる各プラットフォームの仕様をそれぞれ理解しなければならないことと、複数契約による想定外のコストが掛かることが挙げられる
クラウド環境(クラウド型プラットフォーム)を提供するベンダーは複数あり、そのどれもが魅力的な機能を備えています。
ベンダーの選定にあたっては、その機能が自社の運用と見合ったものか、コストや管理面において無理が出ないかを考慮していかなければなりません。
また、今後も更に進化を遂げて新たな仕組みが生み出されていくなかで、最適な環境を見極められるようになることも、IT技術者として必要なスキルといえるでしょう。
※この記事は、公開時点の情報をもとに作成しています。
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