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派遣社員の受け入れを制限する事業所単位の抵触日とは?個人単位抵触日との違いなども解説

派遣社員は、派遣可能な期間に制限があります。事業所単位・個人単位で定められる期間制限は理解が難しく、抵触日の管理に悩むケースもあるでしょう。今回は、事業所単位の抵触日と個人単位の抵触日の違いや、派遣先事業所が注意すべきポイントを解説します。派遣社員を正しく受け入れ、活躍してもらうヒントとして活用ください。

目次[非表示]

  1. 1.派遣社員の受け入れ期間の概要
    1. 1.1.派遣社員を受け入れ可能な期間と抵触日
    2. 1.2.派遣に抵触日がある理由
  2. 2.派遣の抵触日は事業所単位・個人単位の2種類
    1. 2.1.事業所単位の抵触日とは
    2. 2.2.個人単位の抵触日とは
  3. 3.派遣の抵触日についての基本ルール
    1. 3.1.事業所単位・個人単位のうち、先に到来する抵触日が優先される
    2. 3.2.派遣会社が異なっても、最初に受け入れた派遣の抵触日が受け入れ制限となる
  4. 4.派遣受入期間の制限を受けない2つの条件
    1. 4.1.人に関する条件
    2. 4.2.業務に関する条件
  5. 5.派遣の抵触日に関して事業所が注意すべきポイント
    1. 5.1.派遣期間と抵触日を正しく把握しておく
    2. 5.2.抵触日以降の人材確保手段を講じておく
    3. 5.3.抵触日以降も派遣社員を受け入れた場合のペナルティを把握しておく
  6. 6.派遣制限のクーリング期間について
  7. 7.抵触日に関して派遣先事業所がすべき対応
    1. 7.1.事業所の抵触日を派遣会社に通知する
    2. 7.2.派遣会社に事業所の抵触日を通知する方法
  8. 8.派遣期間制限と抵触日に関するQ&A
    1. 8.1.事業所単位で派遣期間を延長したい場合、どのようにすればよいか
    2. 8.2.抵触日が過ぎても、派遣社員に働き続けてほしい場合はどのようにすればよいか
  9. 9.まとめ

派遣社員の受け入れ期間の概要

派遣社員の受け入れ期間に関する概要を、期間と抵触日の観点から解説します。

派遣社員を受け入れ可能な期間と抵触日

派遣社員を受け入れられる期間は、原則として最大3年です。2015年の労働者派遣法の改正で決定され、派遣社員が従事する全業務が対象とされました。最長3年という点から、「3年ルール」とも呼ばれます。

派遣社員の受け入れ可能期間を終えた翌日、つまり派遣可能な期間の制限に抵触する日が「抵触日」です。

派遣に抵触日がある理由

派遣社員の抵触日は、労働と雇用の安定のために設けられました。

派遣社員は、本来は、企業の一時的な人員不足を補うための労働力です。無期限の就業を可能にすると、企業は派遣社員を安価で手軽な労働力として乱用しかねず、社員の雇用がおびやかされます。

また、同一事業所・同一業務への長期派遣では、派遣社員のキャリアアップが阻害され、長期的な雇用安定につながらないおそれもあります。

派遣の抵触日は事業所単位・個人単位の2種類

派遣に関わる抵触日には、事業所単位と個人単位の2つがあります。それぞれを詳しく解説します。

事業所単位の抵触日とは

事業所単位の抵触日とは、派遣社員を同一の派遣先「事業所」で3年以上就業させてはならない制限です。

派遣法で定める事業所は、雇用保険の適用事業所と同様と考えて構いません。場所や経営単位、働き方などに独立性があり、ある程度、継続的に存在する施設を指します。事業所単位の抵触日は、事業所単位で派遣を受け入れた日から起算します。

規模が小さく、本社や上位事業所が経営機能を統括している事業所では、本社や上位事業所を単位とします。

個人単位の抵触日とは

個人単位の抵触日とは、派遣先の同一組織単位で、3年以上同じ派遣社員を就業させてはならない制限です。

個人単位の抵触日における「組織」は、課やチームといった同一業務に従事する組織単位です。たとえば、1人の派遣社員を経理課で3年以上就業させてはいけません。

個人単位の抵触日は、派遣社員個人に対してのものであり、派遣元(派遣会社)を変えて派遣された場合も抵触日は維持されます。

派遣の抵触日についての基本ルール

派遣の抵触日について、知っておきたい基本ルールを2つ解説します。

事業所単位・個人単位のうち、先に到来する抵触日が優先される

事業所・個人と2つある抵触日は、どちらも管理しなくてはなりません。先に到来する抵触日によって就業できる期間が決まるためです。個人単位の抵触日が到来していなくても、事業所単位の抵触日になれば、該当の派遣社員は就業終了となります。

<例>
A社の経理課で、2024年4月1日に派遣社員Bが就業を開始した。A社事業所単位の抵触日と、Bの個人単位の抵触日はともに2027年3月31日である。

1年後の2025年3月31日、Bが就業を終了。後任としてBと同じ派遣元から、派遣社員Cが経理課に派遣され、2025年4月1日から就業する。この時点で、Cの個人単位の抵触日は2028年3月31日。

しかし、A社事業所単位の抵触日が2027年3月31日であるため、C個人単位では派遣可能期間が残っていても、2027年3月31日で就業を終了しなければならない。

派遣会社が異なっても、最初に受け入れた派遣の抵触日が受け入れ制限となる

同時に複数の派遣会社を利用し、派遣社員を受け入れる場合もあるでしょう。この場合、最初に受け入れを開始した派遣会社の抵触日が、事業所単位の抵触日となります。派遣元である派遣会社が異なっても、抵触日は同一です。

<例>
D社は2024年4月1日より、派遣会社Eからの派遣社員を受け入れ始めた。事業所単位の抵触日は2027年3月31日となる。

1年後の2025年4月1日に、別の派遣会社Fからも派遣社員を受け入れることとなった。F社からの派遣社員の個人単位抵触日は2028年3月31日だが、D社の事業所単位の抵触日が2027年3月31日のため、派遣社員に残存期間があっても2027年3月31日に就業を終了させなければならない。

派遣受入期間の制限を受けない2つの条件

派遣の受入期間には、ルールの適用外となる条件が2つあります。「人」「業務」の2つの面から解説します。

人に関する条件

次の条件を満たす派遣社員は、派遣期間の制限を受けません。

  • 派遣元となる派遣会社と、期間を定めない雇用契約を締結している派遣社員(無期雇用派遣)
  • 60歳以上の派遣社員

業務に関する条件

次の条件を満たす業務も、派遣期間の制限を受けません。

  • 一定期間内に完了する有期プロジェクト業務(事業の開始や転換、拡大・縮小、廃止を目的とするもの)
  • 就業日数が少ない業務(月の就業日数が、派遣先企業が定める所定労働日数の半分以下程度、かつ月10日以下)
  • 産前産後・育児・介護等のために休業する労働者の代役として行う業務

派遣の抵触日に関して事業所が注意すべきポイント

派遣受け入れにあたり、事業所が気をつけるポイントを3つ解説します。

派遣期間と抵触日を正しく把握しておく

派遣社員の受け入れ可能期間と抵触日は、事業所単位と個人単位それぞれを確実に管理しなければなりません。抵触日を超えて派遣社員を就業させると、派遣元・派遣先にそれぞれペナルティが課されます。

抵触日は、派遣社員の就業日から起算します。複数の事業所が異なるスケジュールで派遣社員を受け入れた場合はとくに、事業所ごとに異なる抵触日を確実に管理できる体制を整えましょう。

抵触日以降の人材確保手段を講じておく

派遣社員の就業は、抵触日をもって終了します。抵触日前に、派遣社員が担っていた業務を引き継ぐ人材を確保する必要があります。

人材確保の手段の例は、以下の通りです。

  • 抵触日を迎えた派遣社員を直接雇用する
  • 事業所単位の派遣期間制限を延長する
  • 派遣元企業で無期雇用してもらう

事業所単位の派遣期間制限を延長するためには、抵触日1か月前までに該当事業所の労働組合・代表者(過半数)の意見聴取が必要です。また、派遣元企業が派遣社員を無期雇用するためには、「派遣元企業での雇用期間が通算5年以上」「派遣社員の希望」という条件を満たす必要があります。

抵触日以降も派遣社員を受け入れた場合のペナルティを把握しておく

派遣社員の抵触日以降も、受け入れを続けた場合のペナルティは、以下の通りです。

  • 派遣元に対して、30万円以下の罰金
  • 派遣先に対して、行政指導と社名の公表の可能性

抵触日を過ぎて派遣社員を受け入れ続けた場合、「労働契約申込みみなし制度」が適用される可能性もあります。労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が派遣社員に直接雇用を申し込んだとみなすルールです。

派遣制限のクーリング期間について

連続的に派遣社員を受け入れていない期間は、派遣制限のクーリング期間と呼ばれます。クーリング期間を経ると、再び最大3年まで派遣社員を受け入れられるようになります。事業所単位・個人単位ともに対象です。

クーリング期間は、事業所単位・個人単位ともに3か月と1日以上です。ただし、派遣の期間制限が対象外となる事例に対しては、クーリング期間の適用はありません。

抵触日に関して派遣先事業所がすべき対応

派遣先が、派遣社員の抵触日に関して行う対応を解説します。

事業所の抵触日を派遣会社に通知する

派遣契約を締結する場合、派遣先は派遣元に事業所抵触日を通知する必要があります。派遣社員の受け入れ状況や就業の開始日は、派遣先が管理します。そのため、派遣先が派遣元に知らせる仕組みです。

派遣元に派遣社員の事業所抵触日を通知しなければ、派遣契約を締結できません。

派遣会社に事業所の抵触日を通知する方法

派遣元に事業所抵触日を通知するタイミングは、派遣契約の締結前です。書面や書面を添付したメール、メール本文への記載など、通常のビジネス上のやり取りで用いられる方法で通知します。

通知に規定のフォーマットはありません。事業所名と所在地、事業所抵触日が記載してあれば、通知として認められます。

派遣期間制限と抵触日に関するQ&A

派遣期間の制限と抵触日について、よくある質問と回答をQ&A形式でまとめました。

事業所単位で派遣期間を延長したい場合、どのようにすればよいか

派遣期間は、該当事業所の過半数の労働組合(労働組合がない場合は、過半数の代表者)に対する意見聴取で延長できます。派遣期間の延長を考える場合は、抵触日の1か月前までに意見聴取を行いましょう。

また、意見聴取は事業所ごとに実施します。正しいやり方で意見聴取が行われなかった場合、派遣期間の延長は認められません。

抵触日が過ぎても、派遣社員に働き続けてほしい場合はどのようにすればよいか

抵触日以降もその派遣社員に就業してもらう方法は、3つあります。

まず、事業所単位の抵触日の延長手続きです。こちらは前項の解説をご覧ください。「直接雇用に切り替える」「別の課で就業してもらう」方法もあります。個人単位の抵触日は、同一組織単位における3年以上の就業を禁じており、課やグループを異動すれば、続けての就業が可能です。

まとめ

派遣社員の派遣可能期間には、事業所と個人の2つの制限があります。派遣社員を受け入れる事業所は、それぞれの抵触日を確実に管理する必要があります。抵触日以降の就業を希望するならば、必要な措置を講じなければなりません。

ただし、派遣社員が派遣元と無期雇用契約を結んでいる場合は、同一事業所で期間制限のない就業が可能です。

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