企業の経費にはさまざまな種類がありますが、とくに人件費は大きな割合を占める項目です。人件費が膨らむことで、経営が難しくなるケースも珍しくありません。多くの企業にとって人件費の削減は、経営状態を改善させる一手となるでしょう。

この記事では、人件費削減を検討したい企業の担当者に向けて、人件費を削減する方法や人件費削減で押さえるべきポイント、人件費を削減するメリット・デメリットなどを解説します。人件費について悩んでいる人は、ぜひこの記事を役立ててください。

人件費とは

人件費とは、一般的には、企業の従業員の給与や、保険などの法定福利費をすべて合わせた費用を指す言葉です。広い意味では、労務費や外注費、旅費交通費、研修や採用などにかかる採用教育費も含まれます。人件費は、経営に関わる経費の項目のなかでも大きな割合を占めています。

人件費削減で押さえるべきポイント

ここでは、人件費削減のために押さえるべきポイントについて解説します。

「売上高人件費比率」の低下が目標

人件費の削減に取り組む際には、「売上高人件費比率」の低下を目標としましょう。

売上高人件費比率とは、企業の売上高に占める人件費の割合を示した数値です。計算式は、以下のとおりです。

【売上高人件費率】
（人件費÷売上高）×100（%）

数値が高ければ高いほど、人件費の割合が大きいことを示します。人件費を削減しても売上が減少している場合は、売上高人件費比率は下がらない点に注意しましょう。

人件費削減＝賃金カットではない

人件費の削減に取り組む際には、削減そのものが賃金カットではない点を押さえておきましょう。

「人件費削減」は、賃金カットやリストラのイメージが強い言葉です。しかし、賃金カットやリストラは一時的に効果があっても、長期的に見ると人手不足などによる売上減のリスクを抱えています。安易な人件費削減は、経営においては逆効果となり得る点を覚えておきましょう。

従業員に取り組みの背景を周知する

人件費の削減に取り組む際には、従業員に取り組みの背景を周知するようにしましょう。

業務フローの見直しやITツールの導入など、人件費削減のための取り組みは従業員の負担になることもあります。そのため、取り組みの理由や得られる成果など従業員に周知し、十分な理解を得られるように配慮することが重要です。

人件費削減のメリット

ここでは、人件費を削減するメリットについて解説します。

企業の経済状況が改善する

人件費を削減するメリットは、企業の経営に関わる状況が改善する点です。無駄な人件費の削減が実演されれば、不要な支出がなくなり、経営が安定に向かいます。

経営が安定すれば、株価上昇や融資が受けやすくなるなどの効果を望めるでしょう。人件費を削減した分の資金で、新規事業への投資も可能です。

従業員の労働環境が改善する

人件費を削減するメリットは、従業員の労働環境が改善する点です。

業務の効率化や不要な残業をなくすなど、適切な人件費削減の取り組みは、労働時間の削減につながる可能性があります。労働時間が少なくなれば、従業員のワークライフバランスも改善されるでしょう。結果として人件費削減への取り組みは、従業員の満足度向上につながります。

人件費削減のリスク

ここでは、人件費を削減するリスクについて解説します。

従業員のモチベーションが低下する可能性がある

人件費を削減するリスクは、従業員のモチベーションが低下する可能性がある点です。

適切な人件費削減ではなく、安易な給与の引き下げや福利厚生のカットは、従業員のモチベーション低下につながります。モチベーションの低下は、生産性の低下につながり、売上にも影響を与えるでしょう。

また、安易なリストラは、人手不足によって一部の従業員にタスクが集中する要因にもなり得ます。

企業のイメージダウンにつながる場合がある

人件費を削減するリスクは、企業のイメージダウンにつながる場合がある点です。

安易な給与の引き下げや福利厚生のカットによる影響は、従業員のモチベーション低下にとどまりません。従業員の待遇を悪くしている事実が広まれば、企業のイメージダウンにつながるでしょう。

仮に人件費削減によって業績が回復したとしても、結果的に新規事業参入や人材獲得が難しくなる恐れがあります。

人件費削減の6つの方法

ここでは、人件費を削減する方法を6つ解説します。

生産性をアップさせる

人件費を削減する方法の1つは、従業員の生産性をアップさせることです。

従業員1人ひとりのスキルアップが図れれば、パフォーマンスが向上します。スキルアップをする具体的な方法としては、研修や講習の実施、適材適所の人材配置などが挙げられます。

生産性をアップさせる取り組みは、長期的に見ると人件費削減につながるでしょう。従業員のパフォーマンスが上がれば、採用する人数を減らしても業務が回るようになります。

業務フローを見直す

人件費を削減する方法の1つは、既存の業務フローを見直すことです。

まずは、現在の業務フローを分析し、無駄や非効率が生じている部分を特定しましょう。業務フローを見える化することで、課題が明確になり、解決するための具体的な改善策を検討できるようになります。

たとえば、手作業によるデータ入力作業が多い場合は、作業を自動化することで時間を節約できます。従業員が作業にあたる時間を減らせれば、人件費削減が実現されるでしょう。

ITツールを導入する

人件費を削減する方法の1つは、業務に活用できるITツールを導入することです。ITツールを導入すれば、業務の大幅な効率化が見込めるでしょう。

たとえば、ペーパーレス化のためには、ビジネスチャットツールや電子契約ツールの導入が有効です。ペーパーレス化を実現できれば、紙や印刷代のコストカットにもつながるでしょう。ITツールの導入には費用がかかりますが、長期的に見ると高い効果が望めます。

シフト管理を徹底する

従業員のシフト管理を徹底することも、人件費を削減する方法です。

シフト制で働く従業員がいる場合は、適切なシフト管理や配置の変更、勤務時間の切り替えなどの取り組みを行えば、人員を適切に配置できるようになります。人員を適切に配置できれば、業務のピークタイムや繁忙期をカバー可能となるでしょう。

これにより、無駄な労働力の発生が抑えられ、人件費が削減されます。

残業が適切かチェックする

従業員の残業が多い場合には、残業が適切かどうかチェックすることで人件費を削減できます。

時間外労働に対して割増賃金を支払うことは、法律で義務づけられています。そのため、必然的に残業が増えれば増えるほど人件費もかさんでいくでしょう。

もし残業が多くなっている場合には、残業が常態化しており、だらだらと仕事が続けられていないかのチェックをおすすめします。このチェックにより実情を把握可能となり、残業を削減するための具体的な対策を立てられるようになるでしょう。

また、ノー残業デーを設定するなど、定時で帰りやすい環境作りをするのも有効な方法です。

外注化を進める

人件費を削減する方法の1つは、外注化を進めることです。

人手不足になる繁忙期や、専門性の高い業務については、派遣などのアウトソーシングを活用することで、柔軟な人員の配置が可能となります。従業員が効率的に働ける環境を整えれば、ひいては人件費の削減につながるでしょう。

また、専門性の高い業務を外部に委託することで、生産性も上がります。エンジニアなど専門性の高い職種については、派遣の活用を検討しましょう。

まとめ

人件費削減は、単なるリストラや賃金カットにとどまらない、さまざまな取り組みを指す言葉です。人件費削減を実現したい場合には、どのような施策を打つべきかを社内の現状と照らし合わせたうえで検討しましょう。業務フローを見直す、ITツールを導入するなど、やれる取り組みは数多くあります。

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