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多重下請け構造はなぜ生まれるのか|概要と問題点、脱却する方法を解説

多重下請け構造は、「下請けの案件ばかりで、人材のスキルが育たない」「受注予算が少なく、開発現場の労働環境が悪化している」との悩みを増長します。今回は多重下請け構造が起きる原因やその問題点、多重下請け構造から脱却する方法を解説します。自社の競争力を高め、正社員の労働環境を改善するヒントとしてご活用ください。

目次[非表示]

  1. 1.IT業界に多い「多重下請け構造」の概要
    1. 1.1.多重下請け構造の元請け
    2. 1.2.多重下請け構造の下請け
    3. 1.3.多重下請け構造
  2. 2.多重下請け構造の元請けに対する義務と禁止事項
  3. 3.多重下請け構造が多い業界
    1. 3.1.IT業界
    2. 3.2.建設業界
    3. 3.3.運送業界
  4. 4.多重下請け構造が生まれる理由
    1. 4.1.雇用流動性が低い社会的背景
    2. 4.2.人的コストを抑制したい企業の思惑
  5. 5.多重下請け構造の問題点4つ
    1. 5.1.責任の所在がわかりにくい
    2. 5.2.人材が育ちにくい
    3. 5.3.業務負荷が大きくなり、労働環境が悪くなる
    4. 5.4.労働生産性と市場競争力が低下する
  6. 6.多重下請け構造を脱却する利点
    1. 6.1.納品までのスピードと品質が向上する
    2. 6.2.ノウハウや知識を自社に集積できる
  7. 7.多重下請け構造を脱却する方法
    1. 7.1.高い技術力を持つ人材を確保する
    2. 7.2.ビジネスモデルを転換する
  8. 8.まとめ

IT業界に多い「多重下請け構造」の概要

IT業界では、多重下請け構造がよく見られます。まずは、多重下請け構造の概要を解説します。

多重下請け構造の元請け

多重下請け構造には、元請けと下請けが存在します。元請けとは、案件の発注主(クライアント企業)から直接仕事を請け負うことです。元請け企業は、案件全体のマネジメントや、下請け企業への業務発注を担います。元請けは、直請けや一次請け、プライム、元請負人とも呼ばれます。

多重下請け構造の下請け

多重下請け構造での下請けとは、元請けが受注した業務の一部またはすべてを請けることです。案件の発注主との直接的なやり取りはせず、元請け企業とのみやり取りします。案件の受注にあたり、請負契約や派遣契約、準委任契約などの契約を交わします。

多重下請け構造

下請けとして案件を受注した企業が、さらに別の下請けに業務を委託する場合があります。下請けが多層的に発生することから、この構造を「多重下請け構造」や「重層下請構造」と呼びます。

多重下請け構造の元請けに対する義務と禁止事項

下請けを伴う業務の取引公正化と、下請け事業者の利益の保護を目的とした「下請法」という法律があります。

元請け企業は、下請法で定められた義務を果たし、禁止事項を回避しなければなりません。下請法が元請け企業に対して定める義務・禁止事項の例は、以下のとおりです。

<義務>

  • 具体的な発注内容をすべて記載した書面の交付
  • 書類の作成と保存
  • 下請代金の支払期日の決定
  • 代金支払いが遅延した際の利息支払い など


<禁止>

  • 注文した物品の受取拒否、返品
  • 下請代金の支払遅延、減額
  • 買いたたき
  • 元請けが下請けに商品や役務の購入・利用を強制すること など

多重下請け構造が多い業界

多重下請け構造がよく見られる業界は、IT業界と建設業界、運送業界の3つです。各業界の現状と、多重下請け構造が起きる要因を解説します。

IT業界

IT業界では、請負契約による業務遂行が一般的です。請負契約とは、成果物を期日までに納品する約束です。案件の難易度や必要な人手に応じて下請けを利用することが多く、多重下請け構造が発生しやすい環境であるといえます。

また、元請けや発注主は成果物を手にできればよいため、誰が・どの工程に・どのような手順で関わるかまでは重要視しません。元請けが案件遂行のための人材確保を優先することも、多重下請けが発生しやすい要因になっています。

建設業界

建設業界で多重下請け構造が生まれやすいのは、建物の竣工ごとに契約が完了する業界特有の事情にあります。継続的な取引ができないため、安定した仕事量を確保し続けることは至難の業です。そのため、受注側の企業は、自社の人的コストを最低限に抑えて、利益を維持しようとします。人員は必要なときに外注で補う手法が蔓延した結果、多重下請け構造が常態化しています。

運送業界

運送業界は、慢性的なトラックドライバー不足に悩まされています。一方で、荷主からの突発的な運送依頼は、日常的に発生しています。不足するドライバーを補うため、また荷主からの要求に応えるために、運送業務を外注する事業者も少なくありません。

国土交通省の調査では、7割の事業者が「下請のトラック事業者を利用している」と回答しています。

※参考:「トラック輸送における多重下請構造についての実態把握調査に係る調査結果」|令和5年4月27日  経済産業省・国土交通省・農林水産省

多重下請け構造が生まれる理由

多重下請け構造が生まれる理由を、2つの観点から解説します。

雇用流動性が低い社会的背景

雇用流動性とは、人材が自由に企業を移りながら働き続けられることを指します。

日本は、長らく終身雇用を前提として人材を確保してきました。その結果、現代でも雇用流動性が低く、一時的に人員ニーズが高まっても、柔軟な雇用調整が難しい構造になっています。

受けた案件を自社のリソースだけで対応できない場合、外部に業務を委託せざるを得ません。一次下請けも同様に、自社だけで対応できなければ、二次下請けに外注します。こうして多重下請け構造が発生します。

人的コストを抑制したい企業の思惑

IT業界の多重下請け構造は、社会や企業のIT化進行と深く関わりがあります。1980年代以降、IT化の進行とともに、元請けは多くのIT案件を受注しました。人材需要が急激に高まった元請け企業は、自社で人材を育成するのではなく、外注によって案件を遂行しようとします。

自社でIT人材を確保し育成する機運が高まらなかったことが、多重下請け構造が蔓延する要因になりました。

多重下請け構造の問題点4つ

多重下請け構造は、多くの問題点をはらみます。ここでは、4つの問題点を解説します。

責任の所在がわかりにくい

多重下請け構造では、元請けと下請けが多層的に案件に関わります。成果物に問題があっても、どの段階で起きたのかがわかりにくく、責任の所在が曖昧になってしまいます。トラブルの原因究明にも時間がかかり、その間に問題が大きくなる恐れもあるでしょう。

また、多重下請け構造はどのプロセスにも発注者と受注者がいます。案件を受注する構造上、受注側である下請けが劣勢となりやすく、曖昧になった責任の所在を押しつけられる懸念も考えられます。

人材が育ちにくい

多重下請け構造は、人材が育ちにくいという問題もはらみます。1つの案件が細分化されて発注される場合が多く、一機能単位・部品単位の仕事ばかりをこなし続ける事態になるためです。細分化された下流工程だけ経験していても、全体を俯瞰する視点は育ちません。

能力がある人材も、下流の仕事ばかりでは力を発揮できず、能力と仕事内容に歪みが生じます。

業務負荷が大きくなり、労働環境が悪くなる

多重下請け構造では、元請けは、自社の利益を差し引いた予算で下請けに発注します。三次、四次といった下層の下請けになるほど、案件の受注予算が目減りし、予算に見合わない多くの作業が割り振られるという現象が起こります。

少ない予算で案件をこなすために、長時間労働や休日出勤が常態化し、労働環境の悪化につながりかねません。予算不足による残業代未払いをはじめとする、労働問題に発展する恐れもあるでしょう。

労働生産性と市場競争力が低下する

前項により労働環境が悪化すると、下請けにいる人材が疲弊し、生産性の低下や成果物の品質劣化などの悪影響が出ます。成果物の品質トラブルは、報酬の減額につながることもあるでしょう。

さらに、これまでより低い予算での受注によって、さらなる生産性の低下が発生し、最終的には市場競争力が低下するという悪循環に陥る可能性も否定できません。

元請けのなかには、受注した案件を下請けに丸投げするだけで、付加価値を提供せずに利益を享受する企業も存在します。こうした企業の存在が、業界全体の競争力低下を誘引します。

多重下請け構造を脱却する利点

多重下請け構造を脱却すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。多重下請け構造から脱却して手にできる利点を、2つ紹介します。

納品までのスピードと品質が向上する

多重下請け構造を脱却すると、成果物納品までのスピードと品質を向上させられます。すべての工程を自社で完結でき、スピーディで正確なコミュニケーションが可能になるためです。

成果物の完成イメージのすり合わせや方針・手順の共有、テスト結果のフィードバックなどもスムーズに進みます。また、密なやり取りによる品質の向上も期待でき、責任の所在も明確になります。イメージどおりの成果物を、円滑に納品できるようになるでしょう。

ノウハウや知識を自社に集積できる

多重下請け構造では、案件ごとに発生する知見や経験を自社に蓄積できず、人材の育成につながりません。

しかし、自社内で案件を完結できるようになれば、作業に伴うノウハウや知識の蓄積が可能になります。さらに、開発だけでなく運用保守も自社で請け負えるようにすると、稼働中のシステムの全容把握や問題点の発見・解決も容易です。

徐々にノウハウが蓄積していき、優秀な人材育成に貢献できます。

多重下請け構造を脱却する方法

多重下請け構造を脱却する方法は、2つあります。それぞれを詳しく解説します。

高い技術力を持つ人材を確保する

多重下請け構造を脱却して、自社内ですべての工程を完結させるためには、高いスキルを持つ人材の確保がかかせません。これまで外注でまかなってきた工程も、内製化する必要があるためです。

ただし、IT関連の人材は「過去最悪」とまでいわれる水準で不足しています。内製化の円滑な進行に向けて、ITインフラエンジニアの派遣サービスの利用を含め、手法の多面的な検討をおすすめします。

ビジネスモデルを転換する

多重下請け構造を脱却するもう1つの方法は、ビジネスモデルの転換です。自社の強みを生かせる分野に特化したプロダクトやサービスの確立のように、現状の多重下請け構造の外側で勝負できるビジネスモデルを模索しましょう。

多重下請け構造から内製化する方向に舵を切ったことを、経営者から従業員へ明確に示すことも大切です。

まとめ

多重下請け構造は、発注された案件を元請けが受注し、下請けに再度発注する構造が、多層的に連なって生まれます。下請けになるほど受注予算は目減りし、労働環境の悪化にさいなまれることから、社会的に問題視されるようになりました。

多重下請け構造から脱却するには、案件を自社内で完了できるだけの人材確保が不可欠です。しかし、人的コストも無視できないと悩む人も少なくないでしょう。直接雇用が難しい場合は、ITインフラエンジニアの派遣サービスを利用するという選択肢もあります。

アイエスエフネットは、正社員雇用のITインフラエンジニアを派遣している、インフラサービス専門としては最大級の企業です。即戦力となるITインフラエンジニアの派遣相談から、常駐ITインフラエンジニアのバックサポートまで承ります。

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