SalesforceのSlack買収目的とは?営業目線で分かりやすく解説
「2021年12月10日、Salesforce.comがSlack Japanの吸収合併を発表」
大きく報道されたSalesforce社のSlack日本法人の買収ですが、実は一年前にアメリカの母体である、Slack Technologies, Incの買収発表がされておりました。
利用している側や、管理されている情報システム部門目線で見ると「この先何か変わるのだろうか?」といった多少の不安が生じると思います。
結論を申し上げると、その質問の回答は「何も変わらない」でしょう。
当然、Slackがクラウドアプリケーションサービスのため、より良くなっていくという点では変わっていく部分は多くあるでしょうけれども。
では、なぜSalesforce社はSlack社を買収したのでしょうか?
その答えは、「Slack Connect」が欲しかったからだと言えます。
買収の目的は「既存CRMの機能強化」です。
Slack Connectを吸収したことにより何が強化されるのか?
今回はそこを解説していきます。
※本記事は、作成時点の公開情報に基づき、筆者の主観も交えて記載しております。
※本記事は、2022年1月17日時点の情報をもとに作成しております。
SalesforceのSlack買収
米Salesforce社が米Slack社を買収した額、その額なんと277億ドル(約2.9兆円)と公表されております。
過去にも大手IT企業がITベンダー企業を買収したことはありました。
例をあげるとMicrosoftによるSkypeの買収額が85億ドル(約8923億円)、FacebookによるWhat's Appの買収額が190億ドル(約2兆円)と公表されております。
日本の2021年度の防衛費予算が大体6兆円ですからそれを考えると、とてつもない数字です。
それだけの膨大な額を出してまで、Salesforce社は「Slack社を買収したい」と考えたのです。
その理由は「Slack社の売上や利益が欲しかった」からではありません。
将来的な拡大見込は当然あるでしょうけれど、直近のSlack社における財務状況は決して芳しいものとは言えないためです。
Slack社の財政状況
※出典URL:https://gurafu.net/jpn/slack
まずはSlack社の業績だけを見てみると、売上高については2021年3Qは2.35億ドル、
前年度でみると40%もの成長をしております。
利用者数でいうと年間100万人規模でSlackユーザーが増えているといわれているのです。
コロナ禍以降、コミュニケーションツール(ビジネスチャット含む)市場は拡大してきております。
それに伴い売上とユーザー数は驚異的な割合で伸びているSlack社ですが、上記グラフをご確認頂ければわかるように、利益に関しては実は2019年以降プラスに転じたことがないのです。
年間でいうと約300億円の赤字を計上し続けております。
もちろん研究投資に起因するところはあるのでしょうが、事業としては必ずしも順風満帆とは言えない事情が見えてきます。
ここでもう一つ、Slack社の資産価値はどれ位なのでしょう?
2020年10月期での決算報告によると、Slack社の純資産は8.5億ドルだとされております。
Salesforce社の買収額は277億ドルですから、単純に32倍もの価値があると判断しているわけです。
Salesforce社からの買収提案は、厳しい財務事情を抱えるSlack社にとっては魅力のあるものと映ったことでしょう。
では、Salesforce社は、Slack社のどんなところに価値を見出したのでしょうか?
冒頭でも記載しました通り「Slack Connect」だと言えるでしょう。
Slack Connectが欲しかった?
「Slack Connect」とは、Slack社の最大の発明と言って差し支えないものです。
Slack Connectとは
Slack Connectは2020年に発表された、利用することで社外の人とSlack上でつながることができるようになるサービスです。
まさに、このSlack Connectを利用し「他社と繋がることができる」点が、Slackが他のコミュニケーションツールより圧倒的に優れている部分だと言われております。
さらに、Slack Connectはセキュリティ対策にも有効です。
Slack のエンタープライズグレードのセキュリティ機能とコンプライアンス基準に準拠した、安全な連携を可能にする機能である点がそう言われるゆえんです。
Salesforce社はなぜSlack Connectを欲しがったのか?
Salesforce社は一言でいうと、既存アプリケーション強化のためにSlack社を買収しました。
元々、Salesforceのアプリケーションは、全世界で15万社が利用しているNo1のシェアを誇るCRMです。
世界中の経営者、営業、マーケター、エンジニアがSalesforceというプラットフォームを通じ、膨大な顧客データから日々販売戦略を練っております。
今回、Salesforceが「Slack Connect」というツールを手に入れたことで、従来のCRMとしての機能を向上させて、よりダイナミックでオープンでグローバルな販売戦略が打てるようになります。
Salesforceは手はじめにSales Cloud上に「企業間がつながるための空間=専用のディールルーム」を設けました。
この「ディールルーム」を利用して社内関係者はもちろんのこと、今までプロジェクトの会議に参加していなかった、あらゆる利害関係者がSlack内でディスカッションすることが可能になりました。
これにより、リアルタイムで最新情報を共有し、アイデアを出し合い、非常にスピーディーなアクションへとつなげることが可能になったのです。
また、Slackには2,300を超えるアプリ連携を可能にするAPIを備えております。
ゆくゆくは強固なセキュリティを担保しながら、企業間でシステム連携させ、業務効率を大幅に向上できる仕組みなども可能になってくるのではないでしょうか。
まとめ
Slack Connectは、外部も含めた関係者との連携強化に加えて、連携されるアプリケーションの充実で、無限の可能性を感じます。
それを考えると2.9兆円という破格の買い物も決して高くはないのかもしれません。
現在、多くの企業で出社とテレワークを行ったり来たりしているので、リアルとバーチャルの境界が曖昧に感じる社員の方も少なからずいるでしょう。
DX時代の中では、社内外問わず、人という「資産」をいかに有効活用していくかがキーファクターになります。
そういった意味で、SalesforceはSlackコネクトというAPIを取り入れたことにより、強力なコミュニティ基盤を手に入れたと言ってよいでしょう。
おまけ「Slack Connectの利用方法」
Slack Connectはすべての有料プランで活用できます。
相手が無料プランの場合には、90日間お試しで有料プランの利用が可能です。
利用手順
1.Slack Connectをはじめる
2.チャンネルを作成する
サイドバーの「チャンネル」の横にある +(プラスアイコン)ボタンをクリックします。 チャンネルに名前をつけ、「作成」をクリックします。
3.招待を送る
表示される指示に従って、ワークスペースの外部にチャンネルを共有します。
パートナーに Slack からメールでの招待を送信します。
又は提供されたリンクをコピーし、招待メールを送ることも可能です。
4. パートナーの承諾を待つ
お茶でも入れてのんびり待ちましょう。
パートナーがリンクをクリックすると、Slack のサイトが開きます。
そこで招待を承諾してチャンネルを設定してもらいます。
5.管理者から承認を得る
設定によっては、両チームの管理者に承認のための招待が送られます。
チャンネルの招待を管理者が管理するには
ワークスペース名 > 「管理」 > 「共有チャンネルを管理する」をクリックします。
※この記事は、公開時点の情報をもとに作成しています。