仮想化とは?VMwareの機能や仕組みについて分かりやすく紹介
「仮想化」という言葉を耳にする機会があっても、実際にどういったものなのか、あまりよく分かっていない…ということはないでしょうか?
本記事では初心者向けに、仮想化技術の基本的な概念と、仮想化を実現するための代表的な製品である「VMware」について、分かりやすく解説します。
また、仮想化の基本からVMwareの具体的な機能や利点について学ぶことで、自社のITインフラ環境をより最適化していくための知識を得ることができます。
目次[非表示]
- 1.仮想化とは?
- 2.VMwareとはどのような製品なのか?
- 2.1.VMware vSphereの機能
- 2.1.1.スナップショット
- 2.1.2.シンプロビジョニングとシックプロビジョニング
- 2.2.VMware vSphereの主なコンポーネント
- 2.2.1.ESXi(ハイパーバイザ)とは
- 2.2.2.仮想マシンとは
- 2.2.3.vCenter Serverとは
- 2.3.vCenter Serverを利用した主な機能
- 2.3.1.vMotion
- 2.3.2.Storage vMotion
- 2.3.3.vSphere HA
- 2.4.VMware vSphereのメリット
- 3.まとめ
仮想化とは?
そもそも「仮想化」とは一体何なのでしょうか?
仮想化とは一言で言うと、コンピュータ上で複数の仮想環境を作り出す技術です。
ハードウェアリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーク、クライアントPCなど)を、ソフトウェアを用いて統合・分割することで、限られた数量の物理リソース(CPU、メモリ、ハードディスク、ネットワーク等)を、実際の数量以上のリソース(論理リソース)が稼働しているかのように見せかけることができます。
仮想化の利点はいくつかあります。
まず、1台のハードウェア(PCやサーバー)で複数のOS(オペレーティングシステム)を動作させられるため、物理的なコンピュータを複数台用意する必要がなくなることで、コストやスペースの節約ができます。
また、仮想環境は相互に影響を与えることなく独立して動作するため、セキュリティや信頼性の向上にもつながります。
さらに、仮想化されたハードウェアはソフトウェアによって自由に設計できるため、柔軟性の高いシステムの構築が可能です。
VMwareとはどのような製品なのか?
仮想化ソリューションを提供している主なベンダーは以下となります。
- VMware社……VMware
- Microsoft社……Hyper V
- Citrix社……Xen
- Red Hat社……Red Hat Enterprise Virtualization
今回は、仮想化ソフトウェア業界最大手の「VMware」について詳しく解説します。
まず、VMwareの読み方は 「ヴィエムウェア」です。
VMware製品には様々なものがありますが、この記事ではVMwareの主力製品である「VMware vSphere」の機能や仕組みについて紹介します。
VMware vSphereの機能
VMware vSphereの代表的な機能として、以下の2つがあります。
- スナップショット
- シックプロビジョニングとシンプロビジョニング
スナップショット
スナップショットとは、その時点での仮想マシンの状態とデータを保存できる機能です。
状態ごとに、複数の仮想マシンを作成したくないという場合や、未知の障害または有害な効果が発生する可能性のあるソフトウェアをテストするために、一時的なバックアップとして活用することができます。
ゲストOS内で設定を変えた場合でも、すぐに以前の状態に戻すことができます。
シンプロビジョニングとシックプロビジョニング
VMware環境で仮想マシンを作成する工程において、必要なリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を割り当てるフェーズがあります。
ストレージの割り当て方法は、次の2種類から選択できます。
シンプロビジョニング
仮想ディスク作成時には最低限の記憶領域のみ確保し、利用した分だけの容量が消費されます。
たとえば、仮想ディスクを100GBで作成しておいても実際に利用している領域が20GBであれば、その分しか消費されません。
また、必要に応じて容量を後から増やすことも可能なため、サイジングに頭を悩ませる必要がありません。
実際に利用した分だけしか容量が消費されないので、効率的にディスクを利用することもできます。
シックプロビジョニング
仮想ディスク作成時に指定したサイズ分の記憶領域を確保します。
そのため、シンプロビジョニングと比べ、初回の割り当てに時間はかかりますが、展開後のマシンのパフォーマンス(IO速度)は高く、処理効率を求められる業務には最適です。
シンプロビジョニングと比べ、データを書き込むためのストレージ領域が既に確保されているため、書き込みの遅延が発生しないというメリットがあります。
逆に言うと、利用していない領域をディスク消費してしまうため、効率的なディスク利用には向いていません。
VMware vSphereの主なコンポーネント
Vmware vSphereのコンポーネントである、ESXi、仮想マシン、vCenter Serverについて簡単に説明します。
ESXi(ハイパーバイザ)とは
仮想化技術において、仮想マシンを動作させるための中心的な役割を果たすソフトウェアをハイパーバイザといいます。
仮想マシンの管理、リソースの割り当てなどの役割を担い、複数の仮想マシンが稼働する土台のイメージです。
ハイパーバイザであるESXi(イーエスエックスアイ)は、VMware社が提供する仮想化ソフトウェアの一つであり、ESXi上で仮想マシンを稼働させることができます。
仮想マシンとは
ハイパーバイザ上で稼働する仮想的なコンピュータ環境を仮想マシンといいます。
英語ではvirtual machineなのでVMと呼ぶことも多いです。
VMwareに対応しているOSは多数あり、仮想マシンにインストールされたOSをゲストOSと呼ぶのに対し、ESXiはホストとも呼ばれます。
vCenter Serverとは
vCenter Serverとは、リソース管理、ライセンスや機能の有効化など仮想化環境を管理するためのツールです。
後述するvSphere HAやvMotionを実現するためにも必要です。
通常、ユーザはブラウザからvCenter Serverに接続してオペレーションを行います。
vCenter ServerはESXi上の仮想マシン(ゲストOS)として稼働させることも可能ですし、独立したサーバ上で稼働させることも可能です。
vCenter Serverの特徴は以下となります。
- 仮想マシンのCPUやメモリ、ネットワーク帯域などのリソースをGUIで視覚的に行える。
- ストレージ使用率やストレージへのアクセス、サービスごとのCPU使用率などの数値での管理ができる。
- 電源のオン/オフやリソース管理などを一括で行える。
- インポートやエクスポートによって移行作業を容易に行える。
- VMのリソース使用率やOSの状態、vMotionの実行状況などをチェックし、一定以上のリソース使用時やエラー発生時には、アラームで通知できる。
vCenter Serverを利用した主な機能
上述したvCenter Serverで実現できるvSphereの目玉機能を紹介します。
なお、ライセンスによって利用できる機能は変わってくるため、詳細は公式サイトなどを参照してください。
vMotion
仮想マシンを停止させることなく、別のホスト(ESXi)へ移動させる機能です。
主に、ESXiのメンテナンス、リソース管理や障害対策のために利用します。
前提として、仮想マシンを移動する前後のホスト間(ESXi)で、共通のデータストア(共有ストレージ)へのアクセスが必要です。
Storage vMotion
仮想マシンを停止させることなく、仮想マシン上のディスクを異なるデータストアに移動させる機能です。
ただし、上述のvMotionとは異なり、ホスト(ESXi)の変更は行われません。
ストレージ装置のメンテナンス時やデータ移行に利用できます。
vSphere HA
vSphere HA(High Availability)は、仮想化環境での高可用性を実現するための機能です。
ゲストOSやホストに障害が発生した際に、自動的に障害を検出し、障害の影響を最小限に抑えるために仮想マシンを別のホストに移動し稼働させます。
これにより、アプリケーションの停止時間を短縮し、ビジネスの継続性を確保します。
VMware vSphereのメリット
VMwareが手掛ける仮想化ソフトウェアは、日本を含め世界的に圧倒的なシェアを誇っています。
VMwareが支持される理由としては、WindowsやLinuxをはじめとした数多くのゲストOSや、ハードウェア、ソフトウェアに対応している点があげられます。
そのため、VMwareを利用すれば、既存のシステムの仮想化が比較的簡単に実現できるなど、独自のカスタマイズや苦労が少なくてすむところも、多くの企業やユーザーに選ばれる理由です。
そのほか、動作が軽く、インターフェースが直観的に分かりやすい点も、メリットのひとつです。
まとめ
仮想化技術によって、コストやスペースの効率化を実現したり、システムのセキュリティや信頼性の向上を実現したりと、様々なメリットがあることがお分かりいただけたかと思います。
そして、仮想化を実現するソフトウェアとして、VMware vSphereを紹介しました。
VMware vSphereは、GUIによる視覚的に分かりやすいリソース管理や、アラームなどの機能により、インシデントの管理も容易に実現できます。
VMwareのソリューションを導入や展開する場合、VMware社が提供しているVCP(VMware Certified Professional)などの認定資格を学んでおくとよいでしょう。
VMwareに関することだけでなく、一般的な仮想化技術についても問われる内容になっており、汎用性の高い知識を身に着けることが可能です。
また、VCPは世界共通の資格となるため、取得することでエンジニアのスキルセットを証明するのに非常に有効です。