デジタルワークプレイスとは?コミュニケーションツールの導入だけでは不十分?
最近よく聞く“デジタルワークプレイス”ですが
『デジタルワークプレイス...あんまりよくわかっていないんだよな...』
『デジタルワークプレイスってどうやって実現するのだろうか...??』
というように、あまり理解が追いついていない方もいるのではないでしょうか?
デジタルワークプレイスとは、「インターネットさえ繋がっていれば、いつでもどこでも会社と同じように働けるデジタルな仕事空間」のことを指します。
『それってリモートワークの環境を整備するってこと!?それならうちもやってるわ』
と思われがちですが、コミュニケーションツールの導入など、リモートワークの環境を整備することだけでは十分ではありません。
どこにいても対面と同じレベルのコミュニケーションができる環境を整える必要があります。
今回は、そんなデジタルワークプレイスについて
「なぜ今注目されているのか?」
「構成する要素は何なのか?」
など情報システム部門の皆さまが気になる点を徹底的に解説していきます。
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デジタルワークプレイスとは?
デジタルワークプレイスとは、冒頭でも記載した通り
「インターネットさえ繋がっていれば、いつでもどこでも会社と同じように働けるデジタルな仕事空間」のことです。
つまり、従業員の目線で言うと、どこにいようが、誰でも、どんなデバイスを使っていても、社内にいる時と同等のビジネス環境を提供してもらえます。
しかしながら(ここが情報システム部の皆様を悩ませるところですが)デジタルワークプレイスは、テレワーク環境を構築するために、web会議やチャットといったコミュニケーションツールの導入を行ったら完了というような、就業環境の単なるデジタル化ではありません。
あくまでデジタルを前提とした上で、対面と何も変わらないシームレスなコミュニケーションや情報連携を行える環境を作り、密なコミュニケーションや業務の見える化といったテレワーク時の課題を解消することが求められます。
そのため、Web会議ツールやチャットツール、その他のコミュニケーションを行うクラウドアプリケーション導入は必要条件であり、十分条件ではないのです。
デジタルワークプレイスが注目されている背景
今、デジタルワークプレイスが注目されている背景としては、以下の三点が挙げられます。
*ニューノーマルな働き方への注目
*DX(デジタルトランスフォーメーション)の流行
*労働力人口の減少
*ニューノーマルな働き方への注目
新型コロナウィルスの世界的な流行を契機に、テレワークやワーケーションなどの新しい働き方、いわゆる“ニューノーマルな働き方”が注目されるようになりました。
そのタイミングで、情報システム部の皆さまも、急ピッチなテレワーク環境の構築を余儀なくされたのではないかと思います。
実際に、東京に限って言えば正社員で働いている方の約50%の方がテレワークを実施したとの統計が取れております。(2020年4月 約22,000名からのアンケート結果)
出典:総務省 令和2年度版情報通信白書 図表2-3-2-6 地域別の3月と4月のテレワーク実施率より
しかしながら、上記の総務省の情報通信白書にも記載がある通り
「会社じゃないと見られない資料がある」
「社内や社外のコミュニケーションがうまくいかない」
などテレワークを実施したからこそ見えてきた課題も多々あるため、コロナウィルスの状況に合わせて、テレワークの実施と解除を繰り返しているような企業も多くあるのではないでしょうか。
そんな中デジタルワークプレイスは、どこで働いていてもシームレスなコミュニケーションを取ることができるという点で今注目を集めております。
*DX(デジタルトランスフォーメーション)の流行
経済産業省により定義されている“DX”とは、「ITと事業の融合により、事業モデル全体を転換させること」です。
言い換えると、単純にITを利用することや、ITツールを用いて業務の効率化と自動化を図ることは当たり前であり、その上でビジネスモデルの変革をしていく必要があるということになります。
そして、DXの実現において前提条件となる、ITツールを用いた業務の効率化と自動化をはかる上で、デジタルワークプレイス環境の構築は欠かせないものとなるため、デジタルワークプレイスが注目されているという訳です。
※DXについて詳しくはこちら
*労働力人口の減少
日本の労働力人口は、年々減少してきております。
2021年には、2年連続で減少しており、前年比では8万人が減少しております。
出典:総務省統計局 労働力調査(基本集計)より
現時点で、従業員の採用に課題を抱えている企業も多くあると思いますが、労働力人口の減少により、今後さらに採用面が難しくなっていき、多くの企業で従業員数が減っていくことが想定されます。
とはいえ、企業存続のためには継続的に成長していかなければなりません。
労働力人口の減少という前提条件を考えた上で、企業の継続的な成長のために必要なことは「一人あたりの生産性向上」と「ES(Employee Satisfaction:従業員満足度)の向上により離職者をできるだけ出さないこと」の二点です。
この二点をクリアするための仕組みとして、デジタルワークプレイスが注目されているのです。
つまり、どこでどんな端末を使っていようがオフィスと同等の働き方ができるという点で、従来隙間時間だった時間を業務に充てられるようになり、生産性を上げていくことができます。
また、どこで働いていても生産性が向上することにより、従業員の評価とモチベーションの向上につながり、従業員のエンゲージメント(※)を高めていくことができます。
※エンゲージメント:従業員の会社に対する思い入れや企業との関わり合いの度合いのこと
さらに、たとえ従業員が介護などでオフィスを離れなければならない事情ができたとしても、オフィスと変わらない働き方ができるという点で、介護離職なども減らしていくことができるようになります。
そのため、労働力人口が減少していっている状況下では、デジタルワークプレイス環境の導入は必要不可欠となってきております。
デジタルワークプレイスを構成する要素
デジタルワークプレイスが注目されている背景を紹介してきましたが、そんなデジタルワークプレイスを構成する要素としては、以下の三点です。
*一元的なコミュニケーションを可能とする仕組み
*UXを増大させるアプリケーション連携
*従業員に負荷をかけないセキュリティ体制
*一元的なコミュニケーションを可能とする仕組み
まず一点目は、一元的なコミュニケーションを可能とする仕組みです。
どこにいてもオフィスと同様の働き方ができるようになるという点において外せないポイントでしょう。
繰り返しになりますが、対面でのコミュニケーションとなんら変わらない意思疎通がリアルタイムでできる環境が必要になります。
そのため、チャットツールやWeb会議ツールを導入するだけではなく、全てのコミュニケーションツールが一体型となっていなくてはなりません。
たとえば、チャットはSlack、Web会議はZOOMを導入だけしているような状態だとデジタルワークプレイスを構築しているとは言えません。
なぜなら、Slackのチャット機能を使ってコミュニケーションを取っている時に、どうしてもチャットだけでは伝えきれない箇所がある場合、SlackからZOOMにアプリケーションを切り替える手間が発生してしまいます。
この状態では、対面でのコミュニケーションと比べ明らかに時間をロスしてしまうでしょう。
そのため、シームレスなコミュニケーションを可能とするツールや仕組みの導入が欠かせないとお分かりいただけるでしょう。
※ちなみにSlackは、外部アプリケーションとの連携に優れているため、しっかりと連携できる環境を整えていれば、十分なコミュニケーションツールと言えます。
また、Slack単独でもSlackコールというWeb会議機能が搭載されております。(有料版で最大15名までの同時通話)
※Slackについて詳しくはこちら
*UXを増大させるアプリケーション連携
二点目は、UX(ユーザーエクスペリエンス)を増大させるアプリケーション連携です。
UXとは、ユーザーがサービスを通じて得られる体験のことであり、UXを増大させるとは、サービスを利用して得られる体験の価値を高めることを意味します。
つまり、UXを増大させるアプリケーション連携とは、複数のアプリケーションを業務で利用している場合でも、まるで一つのプラットフォーム上で操作ができ、ユーザーがノンストレスで使える状態であることを意味します。
一元的なコミュニケーションでも記載しましたが、複数のアプリケーションをまたいで利用することは、ユーザー側にとって大きなストレス材料となります。
あらゆるアプリケーションが同一プラットフォーム上で繋がっている、もしくはシングルサインオン連携(1つのID/PASSの認証で複数アプリケーションを移動できるようにする技術)などで、アプリケーション移動時の認証にかかるストレスを軽減するような取り組みは必須と言えるでしょう。
*従業員に負荷をかけないセキュリティ体制
いつでも、どこでも働ける環境を作るにあたって、情シスの皆さまが一番気を付けなければならないポイントは、セキュリティ面でしょう。
会社外部で利用する端末の、社内ネットワークへの侵入を許可しなければならないため、セキュリティ面をおろそかにしてしまうと、悪意のある第三者に社内情報を盗み見られたり、盗まれたりしてしまいます。
そんな状態の中で注目されているのが、ゼロトラストセキュリティです。
ゼロトラストセキュリティでは、すべての通信を信頼せず、攻撃されることを前提として対策を実施し、セキュリティ面の強化に努めます。
しかし、セキュリティを強化するがあまりに、従業員が使いづらいシステム構成になってしまっては元も子もありません。
どこにいてもオフィスと変わらず業務ができるようにするため、デジタルワークプレイスでは、セキュリティの強化と従業員のユーザビリティという相反する二つを両立させなければならないのです。
※ゼロトラストセキュリティについて詳しくはこちら
デジタルワークプレイスの実現に向けた情報システム部門の役割
ここまで、デジタルワークプレイスが注目されている背景や、構成する要素について解説してきましたが、そんなデジタルワークプレイス環境の構築に向けて、情報システム部門の皆さまが担うべき役割はとても重要です。
情報システム部門の対応範囲は、広範囲に広がりますが、特に重要となるのは以下の二点です。
*ツールの選定/見直し
*セキュリティ
*ツールの選定/見直し
まず、ツールの選定についてです。
何度も繰り返しておりますが、単なるコミュニケーションツールの導入では、デジタルワークプレイス環境の構築を実現することはできません。
オフィスと変わらないコミュニケーションを行う上で、チャット機能やWeb会議機能、資料共有機能などが必須となりますが、これらが同一のプラットフォーム上にある、もしくは同一プラットフォーム上にあると錯覚されるほどの連携がされている必要があります。
また、その他の業務でよく利用されるアプリケーション同士が密接に絡んだ連携がされているかも非常に重要です。
このように、ただ各々の機能だけに着目したアプリケーションの選定ではなく、アプリケーション同士の連携面までを考慮した上でのアプリケーション選定が求められます。
もし仮に、運用していく上で連携面での不安が生じる場合や、そもそも現在利用しているアプリケーションの連携面がいまいちな場合、アプリケーション自体の見直しを実施する必要があります。
それくらい、シームレスなコミュニケーションの実現に向けては、アプリケーション同士の連携が必要なのです。
*セキュリティ
従業員に負荷をかけないセキュリティ体制でも記載しましたが、なるべく従業員に負荷をかけず、かつセキュリティ面を盤石なものにしていく必要があります。
ゼロトラストセキュリティでは
「認証・認可の強化」
「全ての通信の暗号化」
「全ての通信の監視」
が特に重要だとされております。
その中でも、「認証・認可の強化」については、従業員への負荷が一番かかりやすいポイントです。
そこで、シングルサインオンの導入など、従業員の負荷を減らしつつ、セキュリティ強度を高める仕組みの検討、導入については、情報システム部門の至上命題となるでしょう。
※認証・認可について詳しくはこちら
まとめ
今回は、デジタルワークプレイスについて解説してきました。
単なるテレワーク環境の構築やコミュニケーションツールの導入とは一線を画し、すべてのアプリケーションがシームレスにつながり、場所や時間にとらわれない働き方を実現する手法だということをおわかりいただけたと思います。
今回の内容を振り返り、デジタルワークプレイス環境構築のメリットをまとめると以下の三点が挙げられます。
*生産性の向上:
いつでもどこでもオフィスと変わらない働き方が可能となり、従来の隙間時間を
業務時間に変換できる
*働き方改革の実現:
時間外労働の削減に寄与、働く場所を選ばないため、有給休暇を組み合わせた
ワーケーションなども実現でき、有給休暇取得促進につながる
*ESの向上
時間外労働の削減による、可処分時間の増加ならびに生産性向上による評価や
待遇UPへ貢献することでESの向上につながる
そんなデジタルワークプレイス環境の実現は、1つのツールを入れて終了ではなく、あらゆるアプリケーション間の連携やセキュリティ面などを必要とするため、情報システム部門の皆さまが考えなければならない範囲や対応しなければならないところも多岐に渡り、大変です。
しかしながら、DXの実現に向けた下準備として、デジタル上でシームレスにコミュニケーションを取れる環境は必須です。
会社の未来のためにも、デジタルワークプレイス環境構築に向けた検討をしはじめても良いタイミングではないでしょうか。
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